レアンドロ・エルリッヒ(1973年、アルゼンチン・ブエノスアイレス生まれ)は、視覚的な錯覚や音の効果を用い、鑑賞者の常識に揺さぶりをかけるような体験をもたらす作品を制作。日本では、金沢21世紀美術館に恒久設置された《スイミング・プール》(2004)の作者としても知られている。
東京で初の大規模個展となる本展では、エルリッヒの25年にわたる活動の全容を紹介。8割が日本初公開となる全約40点が展示され、その規模は世界でも最大級だ。
エルリッヒの代表的な参加型インスタレーションのひとつ「建物」シリーズは、本展のための新バージョンで登場。鏡の効果によって生まれる、人々が壁にぶら下がっているような不思議な光景を写真に撮って楽しむこともできる。
また、少子化や地方の過疎化といった日本が抱える問題を背景に、廃校となった学校の教室を舞台として制作された新作《教室》(2017)も発表される。
そのほか、水のない場所で水面に反射する風景を再現した《反射する港》(2014)や、試着室の鏡が迷路のように連なる体験型インスタレーション《試着室》(2008)などが日本で初めて公開される。
本展に向けたメッセージのなかで、エルリッヒは「私の作品を通して、みなさん一人一人が『日常においてわたしたちがいかに無意識のうちに惰性や習慣で行動しているか』、そして『いかに常識や既成概念にとらわれ凝り固まった見方をしているか』ということに気付き、現実を問い直すきっかけとなれば嬉しい」と語っている。「見る」という行為の曖昧さを浮かび上がらせるエルリッヒの作品を通し、「見ることのリアル」に出会う感覚を会場で体感したい。