岩崎貴宏は1975年広島県生まれ広島在住の作家。「テクトニック・モデル」のシリーズで見られるような歯ブラシやタオル、本といった日用品を繊細な風景に転化する作品で知られている。
現在開催中の「ヴェネチア・ビエンナーレ2017」の日本館代表に選出されたほか、ニューヨークのアジアソサエティでの個展「In Focas」の開催や、奥能登国際芸術祭2017に参加するなど国内外で精力的に活動している。
本展出品予定の「アウト・オブ・ディスオーダー」シリーズは、日本辺境の洋上で海底のガスを採掘する光景をモチーフにしたもの。東アジアの海底資産をめぐる争いを背景に制作された作品だが、同時に表現においては日本の文化における中国の影響を思い起こさせるものとなっている。構成は京都・龍安寺の枯山水から引用され、黒いプラスチックだけで構成された風景は山水画を想像させる。
この作品によって、日常生活を俯瞰視させ、エネルギー問題や公害などのより大きな枠組みを可視化させる岩崎。本展に先駆けて発表された文章においても、星空を眺めることから始まり、核融合から発する星の光と核分裂から生じる原子力発電所のエネルギーの対比、さらに化石燃料のような古代の生命から由来するエネルギーへと思いを馳せている。