「showcase」は、写真評論家・清水穣のキュレーションによる、現代若手写真家の展覧会。2012年の開催以来、今年で6回目となる。今回のテーマは、写真における「語り narrative」。既視感のあるモチーフを用いて「narrative」な作品を生み出す、金サジと三田健志の2人展だ。
どんな平凡な写真でも、「撮影時すでに末期癌だった」などの物語を付け加えれば、その写真は切ないものとなる。しかし、後付けの物語は、写真の見方に影響することはあっても、写真そのものを変化させることはない。一方で、写真をただ見ているだけで、断片的な物語が思い起こされることがある。物語は外から与えられるのではなく、写真がもつ細部が、見る者の記憶を刺激し、物語を引き出す。
金サジは、宗教や儀式、民族性といったものを組み合わせて、新しい神話を作り出す。今回は、単一の民族や純粋な神話、伝統など、人々に帰るべき場所を連想させる「STORY」シリーズと、それに関わるスナップショットを展示する。
三田健志による大自然の写真は、インターネット上の写真をプリントし折り曲げて、立体的な舞台となった風景に人物を付け足したもの。冒険家となった鑑賞者は、360度のアングルを楽しみながら、その風景の中で旅をする。同時に三田は、その旅が擬似的なものだということも露わにする。
金サジと三田健志はそれぞれ、2016年度キヤノン写真新世紀グランプリ、2015年度キヤノン写真新世紀優秀賞を受賞している。新進気鋭の2つの才能が紡ぎだす物語を楽しんでみてはいかがだろうか。