本展では、『火の鳥』のアート部分にもフォーカスしている。福岡は、「手塚治虫の絵は非常にダイナミックで視覚的に圧倒的なエネルギーを放つ」と話す。例えば、鳥瞰で描かれたシーンや、群衆が踊ったり戦ったりする場面は、まさにパノラマ的な壮大さを持ち、手塚が自らのペンでこれらを表現したことが、この作品の大きな魅力だと言える。本展では、手塚治虫の原画の展示を通じて、その筆致を間近で鑑賞することができる。
本展を通じて、「生命とは何か」という問いを改めて投げかけたいと福岡は語る。「手塚治虫は、人間が抱く不老不死への願望に対し、命は有限だからこそ輝き、永遠の命を追い求めることがいかに無意味であるかを伝えようとしている。命の問題を考えるうえで、これは非常に大切なポイントだと思う。改めてその意味を受け止めてほしい」。
また、本展の鑑賞者に対して福岡は次のような言葉を寄せている。「『火の鳥』が何であるのか、手塚治虫がその着想に至った原点はどこにあったのか、そして『火の鳥』の結末がどうなるのか、といった時間の軸を楽しんでいただきたい。そのなかで、手塚治虫が描いた壮大な時間軸を感じ取ってもらえたら嬉しい」。
鑑賞者が手塚の作品を通じ、深い哲学的な洞察を得ることができる今回の展覧会。手塚治虫の作品の魅力を再発見するとともに、命の根本的な問いについて考えてみてはいかがだろうか。
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