沖縄を拠点としながら精力的な制作活動を続ける写真家・石川真生(いしかわ・まお)の初期から主要を集めた大規模個展「石川真生 ー私に何ができるかー」が、東京・初台の東京オペラシティ アートギャラリーで開催される。会期は10月13日〜12月24日。
石川は1953年沖縄県大宜味村生まれ。70年代から写真を始め、74年にWORKSHOP写真学校東松照明教室で写真を学んだ。沖縄を拠点に制作活動を続け、同地をめぐる人物を中心に、人々に密着した作品を制作している。
1970年代、石川は沖縄在米兵の黒人のためのバーに勤めながら同僚たちの女性とその奔放な生活を撮影した「赤花 アカバナー沖縄の女」や、そのときに出会った黒人兵の故郷を訪ねる「Life in Philly」など、その時々の人間との出会いをきっかけに、立場を越えて写真を撮り続けるスタイルを早くから確立した。近年では「日の丸を視る目」を契機に、「森花―夢の世界」「大琉球写真絵巻」など創作写真ともいわれる作品を発表。被写体との信頼関係を基盤にした作品づくりは変えることなく、新たな制作に向けて取材を続けている。
石川は2011年に『FENCES, OKINAWA』でさがみはら写真賞を、19年には日本写真協会賞作家賞を受賞。国内外で広く写真を発表し、沖縄県立博物館・美術館のほか、東京都写真美術館、福岡アジア美術館、横浜美術館、ヒューストン美術館、メトロポリタン美術館など、パブリックコレクションも多い。
石川の作品が沖縄以外で初めて紹介されたのは、04年の横浜美術館でのグループ展「ノンセクト・ラディカル 現代の写真III」。同展以来、国内外での数多くの展覧会を経て、21年には沖縄県立博物館・美術館で回顧展「石川真生:醜くも美しい人の一生、私は人間が好きだ。」が開催された。
本展は東京で初めての個展。初期の作品から2014 年から取り組んでいる「大琉球写真絵巻」の新作を中心に約170点を展示し、石川真生の実像に迫るものだ。石川の作歴を概観するとともに、昨年沖縄の本土返還50周年を迎えるもなお、困難な状況に置かれている現代の沖縄という地政学的な最前線で撮影を続けている石川の活動を目撃する機会ともなるだろう。