「六甲ミーツ・アート芸術散歩」が次のステージへ。招待アーティスト拡充など新施策

2010年から毎年開催されている神戸の現代美術の芸術祭「六甲ミーツ・アート芸術散歩」。同芸術祭が今年8月の開幕を前に、新施策を発表した。注目ポイントをまとめてお届けする。

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 兵庫県神戸市を代表する観光地のひとつである六甲山。ここを舞台に2010年から毎年開催されてきた現代美術の芸術祭「六甲ミーツ・アート芸術散歩」の第14回目が、今年8月26日に開幕する。これを前に、同芸術祭を次なるステージへと押し上げる新施策の数々が発表された。

 関西では2025年に大阪・関西万博が開催予定であり、また神戸では神戸空港の国内発着便数が拡大するなど、観光に対する気運が高まりを見せている。そんななか、同芸術祭の主催者である六甲山観光株式会社と阪神電気鉄道株式会社は、神戸市と阪急阪神ホールディングス株式会社のサポートのもと、六甲ミーツ・アート芸術散歩を「関西を代表するアートイベント」へと成長させたい考えだ。

 初回から総合ディレクターを務める高見澤清隆は、過去14回を振り返りつつ、「六甲ミーツ・アート芸術散歩は国内に数多くある芸術祭とは異なり、観光事業のうえに芸術祭をつくっているのが特色」だと話す。「アートを見に行こうという人だけでなく、六甲山に来たらアートがあったというケースも想定している。ここは現代アートとのファーストコンタクトの機能も備わっている」。

 今年は「六甲ミーツ・アート芸術散歩2023 beyond」として、これまでになかったテーマを設定。「表現の向こう側(にあるもの)Beyond Representation」をテーマに掲げ、表現者それぞれの作品とその先にあるものに目を向けてもらおうというメッセージが込められている。

「六甲ミーツ・アート芸術散歩2023 beyond」記者発表会より。左が高見澤清隆、右から2番目が椿昇

招待アーティストの拡充に拠点施設整備も

 新施策の目玉となるのが招待アーティストの拡充だ。これまで公募や招待によって選出された延べ470組以上のアーティストが六甲山上で作品展示を行ってきた同芸術祭。招待枠を昨年の22組から32組へと拡充させ、椿昇や川俣正らベテランアーティストのほか、森山未來がキュレーションする「Artist in Residence KOBE(AiRK)」、伊丹豪、尾花賢一、開発好明、中﨑透、船井美佐、光岡幸一らが参加を予定している。

 このうち、西宮市在住で六甲山に普段から親しんでいるという椿昇は、「地方芸術祭は日本の発明であり、日本人に必要なもの。六甲山はもっとブラッシュアップできる」とし、六甲ミーツ・アート芸術散歩が担う役割の大きさに期待を寄せる。

椿昇

 新施策は会場にも及ぶ。今年は六甲山上の9会場(ROKKO森の音ミュージアム、六甲高山植物園、六甲ガーデンテラスエリア、六甲ケーブル、トレイルエリア、風の教会エリア、六甲有馬ロープウェー 六甲山頂駅、兵庫県立六甲山ビジターセンター、六甲山サイレンスリゾート)が舞台となるが、このうちROKKO森の音ミュージアムを新たに同芸術祭の拠点と位置づける。これまで固定の拠点を持たずに行われてきた六甲ミーツ・アート芸術散歩にとって、大きな転換点となるだろう。

 また同施設の周辺に広がるSKIガーデンを拡張し、野外展示エリアを新設するとともに、三梨伸ら4作家の作品を会期終了後も継続展示。これによって、芸術祭の会期以外でも六甲山に人を呼び込むことが可能となる。

 会場設計では、今回から徒歩で移動しながら作品を鑑賞できるトレイルルートも設定。山歩きと作品鑑賞が同時に楽しめるようになることで、山の上の芸術祭という特性がさらに強調されるだろう。このトレイルルートには、川俣をはじめ、中﨑透ら計7作家の作品が設置予定だ。

川俣正 Photo Gallery Kamel Mennour

 これらに加え、子供を対象としたプログラムにもこれまで以上に注力し、ワークショップや1日キュレーターなどの新企画を通し、次世代の文化芸術の担い手を育むことを目指す。

 ロゴマークも一新され、新たな一歩を踏み出す「六甲ミーツ・アート芸術散歩」。新施策によってこれまでの個性がさらに強化されることだろう。

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編集部

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