現実と非現実の狭間をモチーフに、見えないものや真偽の曖昧なものへの知覚を鑑賞者に想起させる没入型のインスタレーション作品や絵画作品を数多く発表してきた冨安由真。その冨安が初めて舞台美術を手がけた公演『漂幻する駝鳥』が、KAAT 神奈川芸術劇場で上演されている。
冨安は2005年に渡英し、ロンドン芸術大学チェルシー・カレッジ・オブ・アーツで学んだ後、17年に東京藝術大学で博士号(美術)を取得。その翌年には資生堂ギャラリーで個展「くりかえしみるゆめ Obsessed With Dreams」を開催し、大きな話題を集めた。KAATでは21年に個展「漂白する幻影」で劇場空間が丸ごとインスタレーションへと変化させるという大胆な試みで注目を浴びた。
そんなKAATを舞台に、冨安が初となる舞台美術を手がけるのがOrganWorksの新作公演『漂幻する駝鳥』だ。
OrganWorksは、コンテンポラリーダンスの専門家としてダンサー、振付作家として活動する平原慎太郎が主宰するダンスカンパニー。本作ではゲスト出演者に俳優の小川ゲン、ダンサーとして人徳真央、林田海里、タマラ、吉田渚を迎え、OrganWorks から青柳潤、池上たっくん、大西彩瑛、柴一平、村井玲美、渡辺はるか、平原慎太郎が参加し、ハイレベルなダンスとテキストが入り混じりながら、作品のテーマ「乾き」を身体で語る作品を創り上げている。
音楽は北海道在住の景井雅之が制作し、舞台上で福田基との生演奏を披露。衣装は冨安と平原の案を柿野彩がデザイン・制作した。冨安が手がけた、「部屋」を思わせる空間が舞台上で様々に展開していく本作をお見逃しなく。