善と悪、祈りと呪い、自己と他者といった様々な境界線を、詩的かつユーモラスに超えていく作品を制作しているアートユニット「キュンチョメ」。その個展が、東京都中央区のNICAで開催されている。会期は9月12日まで。
キュンチョメは近年、「あいちトリエンナーレ2019」や「シアターコモンズ'20」への参加で大きな注目を集め、今年に入ってからは横浜の民家を会場にした個展「ここにいるあなたへ」で過去10年間に制作した、震災に関わる作品16点を一挙に公開したことでも話題となった。
本展は、大きく2つの映像作品とドローイングで展示が構成されている。2018年から2020年まで、日本と香港を往復しながら3年の年月をかけて制作された《トラを食べたハト》では、平和の象徴であるハトと武力の象徴であるトラをめぐり、侵略、民主化運動、感染症、皇軍の亡霊など、様々なイメージが交差しながら、祈りと決意が描かれる。
また《クチがケガレになった日、私は唾液で花を育てようと思った》(2021)は、新型コロナウィルスが蔓延し、唾液が現代のケガレと言われ始めた日に、唾液で植物を育て始める作品。コロナウイルスから派生したケガレの意識を、生へと転換させる試みだ。
「あいちトリエンナーレ2019」出展以降初となる新作個展。すべてが初公開のこの機会を見逃さないようにしたい。