人間とテクノロジーの関係、人類の進化が描かれたSF映画の金字塔『2001年宇宙の旅』(1968)。この映画を出発点に、人新世の時代を迎えた現代における未来観を問い直す展覧会「2021年宇宙の旅 モノリス ウイルスとしての記憶、そしてニュー・ダーク・エイジの彼方へ」が、東京・表参道のGYRE GALLERYで開催される。会期は2月19日〜4月25日。
原作の物語は、猿人が謎の黒い石板「モノリス」に触れたことで道具を手にし、「ヒト」へと進化を遂げるというもの。やがて人類は宇宙へ進出するまでに発展し、「モノリス」の謎を解き明かそうと初の有人木星探査に出発。そんな旅の途中、宇宙船ディスカバリー号をコントロールしていたAIの「HAL9000」が乗組員に反乱を起こす。続編『2010年宇宙の旅』では、モノリスが電脳空間的であるとともにコンピュータ・ウイルス的であることが証明される。
この作品で人類は未来へと旅立った。本展では、作品の時代背景となった2001年から20年経過した2021年を迎えた今日、「HAL9000」の夢、「モノリス」のヴィジョンとは何かを問い直し、そして、1980・90年代の電脳文化勃興を経て「宇宙旅行」「AIの反乱」「非人間的な知性」「人工的な進化」といった現代の諸問題を芸術作品によって探求していく。
会場には、赤瀬川原平『宇宙の罐詰』(1964)をはじめ、宇宙でも人間が生きられるように臓器の機能を拡張させるためのコルセットや、市場から見捨てられたキャラクターが月面を彷徨う映像作品、「月の裏側」という概念を永遠のメタファーとして提示した作品などが集結。
我々はどこから来たのか、我々は何者か、そして我々はどこへ行くのか。コロナ禍によって既存の価値観の転換が迫られているいま、巨匠アニッシュ・カプーアから、ニューダークエイジの旗手と評されるジェームズ・ブライドルまで9組のアーティストとともに未来観を問い直す。