2020.12.14

一瞬の光を放つ、夜行性動物の眼球のように。落合多武の個展が銀座メゾンエルメス フォーラムで開催へ

ドローイングやペインティング、彫刻、映像、パフォーマンスなど、多様な形態で作品を展開してきた落合多武。その個展「輝板膜タペータム」が、銀座メゾンエルメス フォーラムで開催される。会期は2021年1月22日~4月11日。

落合多武 「灰皿彫刻」より ギターリスト 2017 ミクストメディア (C)Tam Ochiai
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 落合多武は1967年生まれ、現在ニューヨーク在住。ドローイングやペインティング、彫刻、映像、パフォーマンス、詩や文章の執筆、印刷物など多様な形態による実践を重ねてきた。複数の時間や流動的な思考が含まれる作品には、ひとつの概念がかたちをなしては解体され、また次の思考へと結びついていくプロセスを見ることができる。主な個展に「旅行程、ノン?」(小山登美夫ギャラリー、2019)、「Tarragon, Like a Cat’s Belly」(Team Gallery、ニューヨーク、2017)、「スパイと失敗とその登場について」(ワタリウム美術館、2010)など。

落合多武 august 2018 キャンバスに油彩 193.2 x 131.3 cm (C) Tam Ochiai

 そんな落合による個展「輝板膜タペータム」が、銀座メゾンエルメス フォーラムで開催される。会期は2021年1月22日~4月11日。

 本展では、4半世紀にわたる落合の作家活動を通して制作された「M.O.」「Everyone Has Two Places」「ashtray sculpture(灰皿彫刻)」「Itinerary, non?」「Chopin ,Op.97(ショパン、97分間)」などのシリーズを展示。様々なメディアによる作品を組み合わせ、それぞれの作品が導き出す事柄の連鎖や断絶のなかにある自由な遊歩を提案する。

落合多武 ドローイング 2020 ニューヨーク (C) Tam Ochiai

 展覧会タイトルの「輝板膜タペータム」は、夜行性動物の眼球内にある「輝板(タペタム)」という構造物を参照した言葉。これは暗闇のなかのわずかな光をとらえて反射する機能を持ち、猫の目が暗闇で光る現象として理解されている。落合は本展に際して「暗い場所で光を反射し続ける眼球は、見られるものに対して中間地点にいる」と語る。

 「輝板」のように、普段意識していないものから光を集め、一瞬の反射光を放つ軽快な表現を生み出す落合。それらは断片のようでありながら、そこから常に全体像を揺り動かすように作用し、ひとつのナラティブに収束することがない。本展は、見るものと見られるものが自由に交差する、永遠の中間地点を象徴する空間となることだろう。

個展「ショパン、97分間」(てつおのガレージ、日光、栃木、2019)の展示風景
写真=髙橋健治 (C) Tam Ochiai