新進現代作家に注目。京都市京セラ美術館の「ザ・トライアングル」が2021年度の展覧会スケジュールを発表

新進作家の育成・支援を目指し、今年リニューアルオープンした京都市京セラ美術館の敷地内に新設された展示スペース「ザ・トライアングル」が、2021年度の展覧会スケジュールを発表した。

ザ・トライアングルの外観 撮影=来田猛

 京都市京セラ美術館のリニューアルオープンを機に、新進作家の育成・支援を目指して敷地内に新設された展示スペース「ザ・トライアングル」。同スペースの2021年度の展覧会スケジュールが発表された。

 同館スロープ状の広場「京セラスクエア」に突き出たガラス張りの北西エントランスと、地下に位置する「ザ・トライアングル」。その名称には、作家・美術館・鑑賞者を三角形で結び、つながりを深めるという意味が込められているという。

ザ・トライアングル 撮影=来田猛 

 2年度目となる同シリーズでは、初年度から引き続き、現在京都を拠点に制作を行っている3人のアーティストが紹介される。自身が作品の一部となって展示空間に滞在するインスタレーションやパフォーマンスの形式で作品を発表している宮木亜菜(2021年6月29日〜10月11日)、主に写真を用いる加納俊輔(2021年10月26日〜2022年1月23日)、グリッド状のペインティングを中心に制作を行っている川人綾(2022年2月8日〜2022年5月15日)を紹介する予定だ。

宮木亜菜 眠りのあきらめ 2020(京都市立芸術大学ギャラリー @KCUAでの展示風景) 写真=来田猛

 1993年大阪府生まれの宮木は、日々の生活で生じる環境の変化や生への葛藤を制作の原点にし、社会における私的要素と公共的要素との関係性に着目しているアーティスト。京都市立芸術大学ギャラリー@KCUAで発表された《眠りのあきらめ》では、私的な睡眠という行為を公共空間で考察するパフォーマンスを行い、他者がいる空間で、自らが眠りにつく環境を整える実験的な取り組みを試みた。

加納俊輔 Pink Shadow 2018

 1983年大阪府生まれの加納は、写真、版画、コラージュ、映像などを用いた作品を制作。重層的なレイヤーを持つ一枚のプリントから、見るということにまつわる感覚的な反応の不確実さを露わにし、鑑賞者の認識が揺れ動き続けるような感覚をもたらす。近年のシリーズ「Pink Shadow」では、透明フィルムにシルクスクリーンを用いて立体的な木材の表面に二次元の画像をプリントすることで、物質感のある「写真」の鑑賞体験をつくりあげる。

川人綾 ロンシャン ラ メゾン銀座(東京)での展示風景 写真=LONGCHAMP / La Maison Ginza

 また、神経科学や染織などに影響を受けた川人は1988 年奈良県生まれ。近年、ロンシャン ラ メゾン銀座のコミッションワークに代表されるような壁面全体を使用した大胆なインスタレーションに取り組んできた。緻密な手作業による色の塗り重ねによってグリッドを織りなしていく過程において、否応なく生じてしまう歪みや「ズレ」に関心を寄せており、グリッドを通して未知の領域を探っている。

 なお今年度は、同スペースで音楽やフィールドワークを起点として音場空間を構築する荒木優光(12月12日〜2021年2月28日)と、鮮やかな色彩で壁面や建築物にモチーフを描く湊茉莉(2021年3月16日〜6月13日)の個展が予定されている。これらの新進現代作家による様々な取り組みをぜひ会場で体感してほしい。

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