明治時代の様式建築と1930年代以降のモダニズム建築をつなぐミッシング・リンクを解き明かす大正時代の建築運動「分離派建築会」。その日本近代建築史上における位置づけを再検証する展覧会「分離派建築会100年展 建築は芸術か?」がパナソニック汐留美術館で開催される。会期は10月10日〜12月15日。
「分離派建築会」は、日本で最初の建築運動とされるもの。大正時代、明治以降に日本に移入された西洋の様式建築の学習は明治末期にほぼ達成され、最新の建設技術にふさわしい新しい建築のあり方が模索されていた。そうしたなか、1920(大正9)年、東京帝国大学(現・東京大学)建築学科の卒業をひかえた同期の6名、石本喜久治、瀧澤眞弓、堀口捨己、森田慶一、矢田茂、山田守が結成したのが、分離派建築会だ。
「過去の建築圏からの分離」を宣言した分離派建築会は、学内の第二学生控所で習作展を、続いて白木屋で第一回作品展を開催。さらに大内秀一郎、蔵田周忠、山口文象が加わり、1928(昭和3)年の第七回まで作品展を重ね、出版活動を展開していった。1922(大正11)年には東京・上野公園を会場に開催された平和記念東京博覧会での展示館を設計。次第に住宅、公共的建築、商業建築などの実作を通し、建築の芸術を世に問いかけた。
その結成から100年目となる2020年に開催される本展では、図面、模型、写真、映像、さらには関連する美術作品計160点によって、変革の時代を鮮やかに駆け抜けた彼らの軌跡を回顧。6人の立ち上げメンバーと、あとから加わった新メンバー3人をあわせた計9人全員にスポットをあて、その活動と作品を紹介することで、分離派建築会が希求した建築の芸術、日本近代建築の歩みのなかで果たした彼らの役割を明らかにしていく。
なお会場構成は、分離派建築会の会員たちが展開した作品展と出版活動を象徴する「紙」から着想を得て、京都を拠点とする木村松本建築設計事務所が担当する。