2019年8月に逝去したアーティスト・田中信太郎。その活動を振り返る展覧会「風景は垂直にやってくる」が、千葉の市原湖畔美術館で開催されている。会期は10月18日まで。
19歳での鮮烈なデビューから79歳で世を去るまで、60年間におよぶアーティスト人生はまさに日本の現代美術史そのものだった。田中は読売アンデパンダン展で注目を集め、吉村益信、赤瀬川原平、篠原有司男らによる「ネオ・ダダイズム・オルガナイザーズ」に参加。68年に発表した《点・線・面》のミニマルな表現は、倉俣史朗らデザイナーや建築家にも強いインパクトを与えた。
その後は「人間と物質」展(1970)、第36回ヴェネチア・ビエンナーレ(1972)に参加するなど、国際的に活動。80年には病に倒れ、数年におよぶ闘病生活を経て、新たな表現形式による《風景は垂直にやってくる》(1985)で復帰。ブリヂストン本社、ファーレ立川、越後妻有トリエンナーレ、札幌ドームなどで多くのコミッションワークも手がけた。
本展では時代の変遷を追い、当時の記録写真や映像、折々の田中の言葉とともに作品を展覧する。また、日立の山中にあったアトリエの一部を再現し、コミッションワークのためにつくられた模型やドローイングも展示。思考と制作プロセスの一端を紹介する。
今回の企画には、田中と40年あまり親交のあったBankART1929代表・池田修が協力。図録では、田中が深い信頼を置いた3人のキュレーター、中井康之(国立国際美術館)、光田由里(DIC川村記念美術館)、保坂健二朗(東京国立近代美術館)が作家論を執筆。ネオ・ダダ時代をともにした吉野辰海、篠原有司男、そして中原浩大などのアーティストもエッセイを寄稿する。