写真家の砂守勝巳(1951~2009)の名を初めて耳にする人は少なくないだろう。沖縄本島に生まれ、奄美大島で育った砂守は、15歳で大阪へ移住。75年の大阪写真専門学院卒業と同時に写真家としての活動をスタートさせた。
主に写真週刊誌を中心に活動する傍ら、フィリピン出身の沖縄米軍軍属で生き別れとなった父を訪ねた旅を主題にした作品も残している。96年には、写真集『漂う島とまる水』(クレオ)で、第15回土門拳賞や第46回日本写真協会新人賞を受賞した。
現在、その砂守の個展「黙示する風景」が、埼玉県の原爆の図丸木美術館で開催されている(~5月10日)。本展は、美術評論家の椹木野衣をゲスト・キュレーターに迎えた展覧会だ。
椹木は「生前の砂守がその仕事に見合うだけの評価を得られなかった」と評し、その仕事に離散の痕跡を見出した。初の大規模個展となる本展では、未発表作品を含む約100点を展示し、没後10年を経た「写真家・砂守勝巳」を再発見すべく光を当てる。砂守の背景に確実に存在した被災や流浪、そして迫害に共通する様々な離散の痕跡に焦点を当て、それらを「黙示」することを試みている。