2017年から19年にかけて、連続講座や展覧会、ワークショップを通じてKENJI KUBOTA ART OFFICEが取り組んできたプロジェクト「10年後のための芸術表現」。その集大成として、SNOW Contemporaryでアーティスト・布施琳太郎のキュレーションによるグループ展「余白/Marginalia」が開催されている。会期は3月21日まで。
布施は1994年生まれ、2019年東京藝術大学大学院映像研究科修了。作品制作と並行してキュレーションやテキストの執筆を行い、16年に企画展「iphone mural(iPhoneの洞窟壁画)」を開催。スマートフォン以降に出現した新たな「自然環境」を、洞窟壁画に描かれた古代の人々の自然への向き合い方と対照させようというユニークなコンセプトが話題となった。また、19年には「第16回芸術評論募集」で『新しい孤独』が佳作に選出。
展覧会タイトルの英題「Marginalia」は、「テクストの余白に書き込まれた注釈や挿絵、落書き、装飾など」を広く意味する言葉。スマートフォン上で少しでも早く話す/聞くことを強いられる情報環境で、書店で購入した本に線を引いて要約や思いつきを書き込むなど、過去と現在の対話とも言える行為とそこから生まれる「孤独の時間」はどこにあるのだろうか。本展はこうした問いから出発し、会場には作品だけでなく布施の手によるフィクション(物語)も寄せられる。
参加作家は、京都を拠点とするミュージシャンでアーティストの小松千倫、近現代彫刻の保存・修復を学んだ経験をもとに人間存在の営為をテーマに制作を行う髙橋銑、映像作品などを手がける中村葵、自己組織的なプロセスやパターンを、絵画・ドローイングを通して表現する村山悟郎の4名。展示作品とフィクションは互いを自らの物語の「余白」として参照しあいながら、ひとつの体験を立ち上げるだろう。