EXHIBITIONS

河口龍夫「種子が芸術になるとき」

2020.01.10 - 02.08

河口龍夫 関係―ひと粒の鉛の種子・リンゴ 1987

 肉眼ではとらえることができない、人と物質との見えないつながりや事象をかたちとして表現してきた美術家・河口龍夫。本展では、自身の作品の重要なモチーフのひとつ「種子」を主題とした作品を展示する。

 河口は1982年から継続的に「関係—種子」シリーズを展開。種子と最初に出会った場でもある食卓や書籍、櫛、植木鉢、鍬、そして温室まで、多様なものを種子とともに銅や鉛、蜜蝋で封印している。

 本展で展示されるのは、87年に制作された「関係―ひと粒の鉛の種子」シリーズの一部。同シリーズでは、野菜や果実、植物などの種子がひと粒ずつ鉛で密封され、その厚みや大きさ、凸凹などの痕跡から包まれた種子の存在を感じることができる。

「関係―ひと粒の鉛の種子」シリーズの公開は本展が初めて。ひと粒の種子そのものと真摯に向き合った作家の痕跡を各作品から見て取ることができるとともに、複数の種子が蒔かれたような構成の「関係—種子」シリーズを新たな視点から考察する貴重な機会となる。

「目の前に置かれているひと粒の蓮の種子を見つめ続ける。ときには触ってみたり、手の平に置いて匂いをかいでみたりして、数時間そのひと粒の蓮の種子と対峙する。そして、その種子をできるだけ理解しようと努力する。できれば蓮という言葉を超えてひとつの生命体としてのありのままを理解しようと試みる。しかし、いったい一粒の蓮の種子を理解するとはどういうことであろうか。種子がわかったという根拠はどこにあるのであろうか。さらに何をもってわかったといえるのであろうか。蓮の種子を見つめながら、自問自答の時間が経過する(河口龍夫)」