アート作品と商品の境界線がさらに曖昧になっていく今日、アーティストの松田将英は、意図的にそういった境界領域を活動の場に選ぶ。現在、そんな松田の個展「White Magazine」が、東京・外苑前のEUKARYOTEで開催されている。会期は12月22日まで。
本展のタイトルにもなっている「White Magazine」は、2018年にGDPR(EU一般データ保護規則)が施行されたヨーロッパにおいて、松田がプライバシーパラドックスやナラティヴセラピーといった先進的な課題と精神療法を調査のうえ、考察しながら生み出されたサブスクリプション方式の参加型作品。
本作には、専用のウェブサイトがあり、サイト上でオーサー登録を行った参加者の自宅には、毎月新月の日に翌月分の今日を示す数字のみが記された白紙の雑誌《File》が定期配送される。
加えて、それらを収納する専用ケースとして1年毎に《Folder》、10年毎に《Disk》も提供。プライバシーを保護されたメディウム上に、個人のなかにしか存在しない真実の記録とアーカイブを促し、記述行為を通して参加者をオーサー(作家)に置き換えるという試みだ。
なお「White Magaine」を空間化した本展は、3階建ての同ギャラリーの構造を活用した3部構成となっている。まず来場者は、1階で1時間のチュートリアル「One Hour」の受講が義務付けられ、受講した通過者のみ2階、3階の展示室を鑑賞可能だ。退場時には、20年から利用できる「File」が配布される(数量限定)。デジタル環境との対比構造をつくりながら、データ駆動型経済の抱える諸問題を浮き彫りにする松田の試みが目撃できる。