アン・トゥルイット(1921~2004)は、アメリカ・メリーランド州生まれのアーティスト。近年の主な展覧会に「In the Tower: Anne Truitt」(ナショナル・ギャラリー、ワシントン D.C.、2017)、「Intersections」(ボルチモア美術館、2016)、「Anne Truitt in Japan」(マシュー・マークス・ギャラリー、2015)などがある。
そんなトゥルイットのドローイングを紹介する展覧会が、東京・六本木のTARO NASUで開催されている。会期は12月21日まで。
トゥルイットは心理学を学び、看護師として務めた後、40年代半ばから制作活動を開始。初期は具象的な彫刻を手がけたが、アド・ラインハートやバーネット・ニューマンらの作品に触れたことをきっかけに、箱や柱を思わせる幾何学的な彫刻を制作するようになる。
1963年にニューヨークで開催されたトゥルイットの初個展を訪れた美術批評家のクレメント・グリーンバーグは、後にエッセイ「Recentness of Sculpture」(1967)のなかでミニマル・アートの先駆者のひとりとしてその名前を挙げ、高く評価した。
自身の記憶をテーマとするトゥルイットの作品において、抽象的な形態と色彩の組み合わせという基本的な要素は、彫刻とドローイングに共通している。本展では、トゥルイットが最初にミニマルな彫刻を手がけた61年のものや、64~67年の日本滞在時に制作されたものを含む13点のドローイングを展示。
同時代のミニマル・アーティストたちが行った工業的な制作方法とは異なり、一貫して自らの手作業で作品を生み出していたトゥルイット。そのドローイングからは、2次元と3次元の揺れのなかに現れる、思考と試行の過程を見ることができるだろう。