2019.11.30

移転前最後の展覧会。東京国立近代美術館工芸館でコレクション展「パッション20 今みておきたい工芸の想い」が開催

2020年に石川県金沢市への移転を控えた東京国立近代美術館工芸館で、移転前最後となる所蔵作品展「パッション20 今みておきたい工芸の想い」が開催される。本展では超絶技巧からオブジェまで、工芸の100年を「パッション(情熱)」をテーマに読み解く。会期は12月20日〜2020年3月8日。

鈴⽊⻑吉 ⼗⼆の鷹(部分) 1893 東京国⽴近代美術館蔵
前へ
次へ

 2020年の東京オリンピック・パラリンピック前のオープンを目指し、石川県金沢市に通称「国立工芸館」として移転する東京国立近代美術館工芸館。その東京では最後となる展覧会「パッション20 今みておきたい工芸の想い」が開催される。会期は12月20日~2020年3月8日。

 本展では「パッション(情熱)」をテーマに、超絶技巧からオブジェまで工芸の100年を展観。工芸家の言葉や活動、出来事から20を抽出し、5章構成で収蔵作品約150点を紹介する。なかでも注目したいのは、今年新たに重要文化財に指定された鈴木長吉《十二の鷹》(1893)。今回は、シカゴ万博に出展された当時の姿で見ることができる。

平田郷陽 桜梅の少将 1936 東京国⽴近代美術館蔵

 「日本人と『自然』」の章では、草木染めの糸を用いた紬織で知られる志村ふくみの作品のほか、後期は「衣通姫(そとおりひめ)」の伝承を想起させる喜多川俵二作品を展示。「オン・ステージ」では、小名木陽一《赤い手ぶくろ》と《十二の鷹》を対比し、近代の作家たちが目指した「日本的なもの」を検討する。また「回転時代」では、官展への参加を目指して運動が活発化した大正から昭和初期の工芸界にフォーカスし、「民藝」「桃山復興」など同時期の運動も紹介する。

 小名⽊陽一 赤い手ぶくろ 1976 東京国⽴近代美術館蔵

 「伝統⇔前衛」では戦後の工芸を取り上げ、カレンダーなどの量産を本格的に始めた芹沢銈介の活動をはじめ、「人間国宝」「オブジェ焼き」などの日本的な事象とともに、それらに通底する理論を模索した作家・研究者の共同作業を検証。そして「工芸ラディカル」では、子供の頃から人形に魅了され、その奥底にある世界観を探ってきた四谷シモンの作品などを紹介する。

 なお会期中には上原美智子(染織)、高橋禎彦(ガラス)、橋本真之(金属)の工房の様子を撮影した映像も上映。建築家・谷口吉郎が改修を手がけた赤レンガの建物で、日本を代表する工芸作品を鑑賞できる最後の機会を逃さずチェックしてほしい。

芹沢銈介 1948年のカレンダー(4月、5月、6月) 1947 東京国⽴近代美術館蔵
 四⾕シモン 解剖学の少年 1983 東京国⽴近代美術館蔵