女優でありミュシャ、ラリックのパトロン。「サラ・ベルナールの世界展」が渋谷区立松濤美術館で開催

フランス出身のサラ・ベルナールは、19世紀半ばから20世紀初頭にかけて女優として活動。またミュシャやラリックの才能をいち早く見出し、パトロンとしてその活動を庇護した。そんなベルナールの世界を紹介する「パリ世紀末ベル・エポックに咲いた華 サラ・ベルナールの世界展」が、渋谷区立松濤美術館で開催される。会期は12月7日〜2020年1月31日(展示替えあり)。

アルフォンス・ミュシャ サラ・ベルナール 1896 リボリアンティークス蔵

 無名の芸術家だったアルフォンス・ミュシャのの名が一躍世に知られるきっかけとなった『ジスモンダ』の公演ポスター。これに描かれている同作の主演女優、サラ・ベルナール(1844~1923)を知っているだろうか。

 ベルナールは19世紀後半から20世紀初頭にかけて、「ベル・エポック」(良き時代、美しき時代)と呼ばれた華やかな時代のパリで活躍。女優として成功を収めた後はフランス国外にも活躍の場を拡げ、自らの一座を立ち上げ劇場経営にも携わったほか、アーティストとして彫刻作品の制作を行うなど生涯にわたって幅広い活動を続けた。

C.W.ダウニー 街着姿のサラ・ベルナール 1902 個人蔵

 そんなベルナールの人生を、当時の貴重な資料や美術作品で紹介する「パリ世紀末ベル・エポックに咲いた華 サラ・ベルナールの世界展」が、渋谷区立松濤美術館で開催される。会期は12月7日~2020年1月31日。

 ベルナールは1862年、国立劇場コメディ=フランセーズでデビュー。72年に出演したヴィクトル・ユーゴーによる戯曲『リュイ・ブラース』での演技が高く評価され、国民的な人気を獲得する。本展では、ベルナールのプライベートや舞台上の姿を収めた写真や絵画、実際に身につけたドレスや装飾品からその人生の軌跡をたどる。

ルイーズ・アベマ サラ・ベルナール 1909 エタンプ市美術館蔵

 画家たちにインスピレーションを与えるミューズでもあったベルナール。その人生には、芸術家たちの存在も深く関わっている。トゥールーズ=ロートレックや、ベルナールの恋人だったと言われるジョルジュ・クレラン、ルイーズ・アベマらは、女優として成功を収めた華やかな姿を数多く描いた。

 また『ジスモンダ』の公演ポスターが大人気となったミュシャは、ベルナールと6年間の専属契約を結び、その後も次々と主演作品のポスターを制作。当時フリーランスの宝飾デザイナーとして独立したルネ・ラリックも、ベルナールにその才能を見出されたひとりだ。ベルナールがプライベートや舞台上でラリックの装飾品を身につけたことにより、ラリックの作品は世間の注目を集めることとなった。

アルフォンス・ミュシャ ジスモンダ アメリカツアー版 1895 リボリアンティークス蔵

 本展では、ベルナールがパトロンとしてその活動を庇護したことで名声を得ることとなったミュシャとラリックの作品も展示。ベルナールのために制作した、もしくはモチーフとして制作したものを通して、彼らの交流を紹介する。

 そのほかにも「ベル・エポック」の享楽的で華麗な雰囲気を伝える作品の数々や、多くの商品や広告に用いられ、人々の記憶に深く刻まれていったベルナールの様々なイメージが一堂に会する本展。女優、劇団の監督として、そしてアール・ヌーヴォーの旗手となる芸術家たちが大成する素地をつくったパトロンとして生きたベルナールに迫る日本初の展覧会を、逃さずチェックしてほしい。

デザイン=アルフォンス・ミュシャ 制作=ルネ・ラリック 舞台用冠 ユリ 1895 箱根ラリック美術館蔵

編集部

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