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マルセル・デュシャン

Marcel Duchamp

 マルセル・デュシャンは1887年フランス生まれ。14歳の頃から絵画に取り組み、印象派の影響を受けた風景画などを描いた。1912年、キュビスムや未来派を思わせる《階段を降りる裸婦 Ⅱ》を制作。その翌年から従来の絵画を離れ、「美的無関心」を基準として選ばれた自転車の車輪、ビン掛け、シャベルなどの既製品を作品化し、「レディメイド」の概念を打ち出した。17年、自身も実行委員を務める米独立美術家協会主催のアンデパンダン展で便器に「R.Mutt」とサインしたレディメイド作品《泉》(1917/650)を偽名で出品。他の委員が展示を拒否し、作品はその後行方不明となった。

 代表作のひとつであり、ガラス板にメカニカルな図像を刻んだ《彼女の独身者たちによって裸にされた花嫁、さえも(通称・大ガラス)》(1515〜23)は、哲学、数学などの要素が複雑に絡み合っており、その制作メモやデッサンをまとめた《グリーンボックス》(1934)を通して図像の内容を推測することができる。また、20年にわたり秘密裏に制作が進められ、古い木製の扉の覗き穴から、片手にガス燈を持った全裸の女性が脚を大きく開いて横たわる姿が見える遺作《1.落ちる水 2. 照明用ガス、が与えられたとせよ》(1946〜66)も代表作のひとつとして知られる。デュシャンがメモに残し、明確な定義のなされていない造語「アンフラマンス」をはじめ、その概念や作品の謎には様々な解釈が与えられてきた。