ダムタイプは1984年、京都市立芸術大学の学生を中心に結成。バブル経済の表層性のなかにあった「情報過剰であるにも関わらずこれを認識できていない(=ダム、dumb)状態」を敏感にとらえ、鋭い批評性を持って活動を展開した。台詞を排し、装置、映像、音、そしてパフォーマーの身体によって作品を構成した彼らは、ポスト・ヒューマンのビジョンを世界に先駆けて表現したパイオニアとも言える存在だ。
95年には、中心的な存在であった古橋悌二がエイズによる感染症のため逝去。独自の表現活動を展開しつつコラボレーションを行うスタイルを維持しながら、その後も高谷史郎や池田亮司、新たなメンバーによって現在まで活動を続けている。
そんなダムタイプの大規模個展「ダムタイプ―アクション+リフレクション」が、東京都現代美術館で開催。本展は2018年、フランスのポンピドゥー・センター・メッスで行われた個展「DUMB TYPE:ACTIONS + REFLEXIONS」に新作やアーカイブを加えてバージョンアップしたものだ。会期は11月16日~2020年2月16日。
本展では、新作を含む6点の大型インスタレーションを展示。1990年初演の同名パフォーマンスにおける象徴的な舞台装置を再現した《pH》や、ジェンダーやエイズ、セクシュアリティなど社会が抱える問題を正面からとらえたパフォーマンス《S/N》のために制作されたビデオ・インスタレーション《LOVE/SEX/DEATH/MONEY/LIFE》などを見ることができる。
加えて注目したいのは、古橋が死の直前に書き残した「生と死の境界について」「どれほど科学はその境界を制御できるか、どれほど我々の精神はこの境界を制御できるのか」というアイデアから出発した《OR》などの作品から抜粋した印象的・象徴的なシーンや、新たに撮影した映像素材から構成される《MEMORANDUM OR VOYAGE》。また、古橋が《S/N》と同時期に制作した遺作《LOVERS》も展示される。
来年3月には、ロームシアター京都で約18年ぶりとなる新作パフォーマンスの上演を予定しているダムタイプ。その初期から現在までを貫く革新的な視覚言語と思想を、本展で振り返りたい。