ニコラス・ハットフルは1984年東京生まれ、2011年にイギリスのロイヤル・アカデミー・スクールを卒業。現在はロンドンを拠点とし、サーチギャラリー(ロンドン)やジョルジュ・エ・イザ・デ・キリコ財団(ローマ)など様々な美術館のグループ展に参加。加えて、『Frieze』や『Mousse』といったメディアへの寄稿や批評など、その多彩な活動にも注目が集まっている。
そんなハットフルのアジア初となる個展「Thermals of the Heart―こころの温度」が、東京・銀座のTHE CLUBで開催される。
iPadで描いたスケッチをもとに、油彩やスプレーペイントを駆使して力強さと透明感が共存する作品を手がけるハットフル。その儚くも鮮やかな心象風景は、飾り気のない日常を繊細に映し出す小津安二郎の映画に影響を受けたものだという。
ハットフルは本展に寄せて「小津のカラー映画こそが、掛布団やシーツ、タオルといった私の日々の記憶に散らばる様々なイメージの源泉なのです。風が草木をざわつかせ、洗濯物はまるで生きているかのように風に踊る。それは、小津安二郎の映画の場面の移り変わりのなかで幾度となく現れるさりげない光景なのです」とコメントしている。
本展では、今回のために制作された14点の新作を紹介。溶けるように淡く変化する輪郭で描かれるシュールな絵画を、ぜひ会場で楽しみたい。