疾患と治癒、通過儀礼の物語としてイナバノシロウサギを読み解く。飯嶋桃代の個展がギャルリー東京ユマニテで開催

繊細な素材を使ったダイナミックなインスタレーションで知られる作家・飯嶋桃代の個展「〈疾患〉と〈治癒〉―通過儀礼としてのイナバノシロウサギ説話」が、東京・京橋のギャルリー東京ユマニテで開催される。本展で飯嶋は、オブジェと映像で構成されるインスタレーションを展開。会期は6月1日〜15日。

飯嶋桃代 新作映像作品(イメージ)

 飯嶋桃代は1982年神奈川県生まれ、2011年に女子美術大学大学院を修了。近年は「パランプセスト 重ね書きされた記憶 vol.1 飯嶋桃代」(gallery αM、2014)、「第9回 shiseido art egg」(資生堂ギャラリー、2015)などの展覧会をはじめ、精力的に発表を続けている。

 これまで、古着や食器といった日用品を家型の白いパラフィンワックスに封じ込めた作品や、衣服のボタンやネームタグ、毛皮、陶器などを用いて展示空間を覆い尽くす大がかりなインスタレーションを発表してきた飯嶋。家族の記憶や社会と個人の関係性をていねいに拾い上げ、一貫してそのあり方を問い続けている。

 飯嶋は今回、古事記にも登場する有名な説話・イナバノシロウサギを疾患と治癒の物語としてとらえ、オブジェと映像からなる新作インスタレーションを発表。兎が負う痛み(疾患)、そして神への変化(治癒)を、通過儀礼としての視点で読み解いていく。

 数年前から民俗学や民話に興味を持ったという飯嶋が、はじめて具体的なイメージを展開する本展。古から様々なかたちで伝わる物語は、現代の日々の暮らしにつながる普遍的なものだと言えるだろう。新たな視点とともに飯嶋が提示する儚くも力強い世界を、この機会に覗いてみたい。

編集部

Exhibition Ranking