国吉康雄(1889~1953)は岡山県生まれ。日露戦争の翌年、16歳の若さで労働移民として単身渡米し、以降アメリカを拠点に活動した。
アメリカで美術教育を受けて画才を伸ばし、その評価を着実なものとしていった国吉。亡くなる前年の1952年にヴェネチア・ビエンナーレのアメリカ代表に選ばれ、2015年のスミソニアン・アメリカ美術館での大回顧展には多くの人が訪れるなど、アメリカの多様性の象徴として近年再評価されている。
そんな国吉が生涯でただ一度の帰国をしたのが1931年。その際、日本での国吉の個展のために尽力したのが藤田嗣治だった。ふたりは共通の友人であるエコール・ド・パリ全盛期の画家、ジュール・パスキン(1885~1930)を介してパリで出会ったという。
本展は、そんなふたりの関係性に焦点を当てて構成。国吉作品約40点に加え、熊本県立美術館が所蔵する藤田の作品やエコール・ド・パリの画家たちによる作品を展示し、ふたりが生きた時代とその画業を読み解く。