1960年代の日本人アーティストによる急進的な表現活動に焦点を当てた展覧会「Radicalism in the Wilderness: Japanese Artists in the Global 1960s」が、3月8日にニューヨークのジャパン・ソサエティー・ギャラリーで開幕する。キュレーションは、ニューヨークを拠点とする美術史家でインディペンデント・キュレーターの富井玲子とジャパン・ソサエティー・ギャラリーのディレクター、神谷幸江。
本展では、松澤宥や「ザ・プレイ」、「GUN(Group Ultra Niigata)」など、東京を代表とする経済文化中心地から距離を保ちながら、日本の遠隔地で活動していたアーティストやアートコレクティヴを中心に紹介。そのほか、ギルバート&ジョージや河原温、イヴ・クライン、オノ・ヨーコ、デニス・オッペンハイム、草間彌生、ローレンス・ウェイナーなど、世界中の同世代アーティストとのつながりや響き合いも探る。
神谷は、「日本の戦後美術は近年、世界的な注目を集めています」としながら、「具体美術協会の活動が始まった1950年代に続き、『もの派』が始動する1970 年代に先立つ1960年代は、社会・政治的な大きな変化のなかで、美術のために用意された既成の場を離れた実践が数々行われてきました」と語っている。
これらのアーティストの大胆かつ遊び心に富んだ概念実験は、日本での社会変化に加え、アポロ宇宙計画やベトナム戦争、世界中で起きた学生運動など1960年代の複雑な社会的、政治的、文化的な問題を反映している。本展では、絵画やコラージュ、記録写真、そしてフィルム、手紙、エフェメラなどのアーカイブ資料を含む、数々のアメリカで初公開の作品が展示される。
富井は本展について、次のようにコメントしている。「1960年代の日本は戦後モダニズムの研究において、とても興味深い位置にあります。国際的同時性は、都心だけでなく、私が『荒野』と呼ぶ東京以外の地域でも見られ、様々な実践の系譜によって彩られています。その『荒野』で、美術家たちは首都を中心とした文化の在り方や現代美術の主流とは隔絶した戦略を考案していきました。ローカルな文脈に根差していたこれらの美術形は、世界で起きていた美術の潮流との類似性を知らず知らずのうちに体現することとなったのです」。