2020年に開館予定の美術館「M+(エムプラス)」が、イギリスの前衛建築家集団・アーキグラムの全アーカイブを1.8万ポンド(約2億5000万円)で購入したことがわかった。
アーキグラムは1961年、ピーター・クック、デニス・クロンプトン、デヴィッド・グリーン、ウォーレン・チョーク、ロン・ヘロン、マイケル・ウェブを基本メンバーとしてイギリスで結成し、70年代初頭まで活躍した前衛的建築家グループだ。
脚付きの巨大な都市が、居住者が希望する場所へと移動する「ウォーキング・シティ」や、着脱可能な空間ユニットを集合住居やオフィス、店舗など多様な用途にあわせて組み立てた「プラグイン・シティ」など、奇抜なアイデアを同人誌『アーキグラム』誌上で発表。「建築界のビートルズ」とも呼ばれる前衛的でユーモアにあふれた姿勢は建築家のレム・コールハウスやザハ・ハディドなどの建築家だけでなく、ポール・スミスなどのデザイナーにも影響を与えたとされている。また、2002年にはその活動が認められ、建築界でもっとも栄誉ある賞とされる「英国王立建築家協会(RIBA)」のゴールドメダルを受賞した。
この度M+が購入したのは、図面、ドローイング、写真、建築模型、ビデオおよびオーディオテープ、書類など約3万点におよぶ全アーカイブ。The Architects' Journalによると2016年時点で、これらのアーカイブはロサンゼルスのゲティ研究所が270万ポンド(約3億8000万円)と査定したが、M+香港の購入額はこれを下回るものとなる。これに対し、アーキグラムの現存するメンバーは「適切な場所を選んだ」と語っているという。
M+は、西九龍文化区に2020年開館予定の美術館。建築家ユニットのヘルツォーク&ド・ムーロンが設計し、6万平米以上の延床面積を持つ巨大美術館をつくるこの美術館では、1950年以降の美術をはじめ、建築やデザイン、映画、大衆文化など広範囲な視覚文化を紹介していく。