国吉康雄(1889〜1953)と石垣栄太郎(1893〜1958)は、それぞれ岡山県と和歌山県から、ともに十代で移民としてアメリカに渡った。様々な職に就きながら画家を目指していた2人は、美術学校で出会って以来親しい友人関係を結ぶ。
国吉は、象徴的な画面に巧みにメッセージを忍ばせる作風でアメリカ画壇に認められ、戦後にはホイットニー美術館で現存画家として初の回顧展を開催。いっぽう石垣は、より直裁的な表現で生活や風俗を描き、また社会主義に傾倒するなかで同時代の様々な問題を作品によって告発した。彼らは太平洋戦争が始まると「敵性外国人」という立場に置かれたが、アメリカの自由と民主主義の理想を信じ、日本の軍国主義を批判する作品を発表した。
それぞれ異なる作風ながら、2人の作品には、日本人移民排斥や大恐慌、戦争など激しく揺れ動くアメリカ社会で生きるうえでの複雑な思いが込められている。石垣の故郷である和歌山県で開催される本展は、2つの国の間で生きた2人の画家が、時代と社会に対してどのように向き合い、作品を残したのかを改めて考える機会となるだろう。