激動の時代をアメリカで生きた2人の画家、国吉康雄と石垣栄太郎の足跡をたどる

戦前に移民としてアメリカに渡り、太平洋戦争を経ながら画家として活躍した国吉康雄と石垣栄太郎。2人の作品を紹介する展覧会が、和歌山県立近代美術館で開催されている。会期は12月24日まで。

国吉康雄 ここは私の遊び場 1947(昭和22) キャンバスに油彩 福武コレクション

 国吉康雄(1889〜1953)と石垣栄太郎(1893〜1958)は、それぞれ岡山県と和歌山県から、ともに十代で移民としてアメリカに渡った。様々な職に就きながら画家を目指していた2人は、美術学校で出会って以来親しい友人関係を結ぶ。

国吉康雄 ミスターエース 1952 キャンバスに油彩 福武コレクション

 国吉は、象徴的な画面に巧みにメッセージを忍ばせる作風でアメリカ画壇に認められ、戦後にはホイットニー美術館で現存画家として初の回顧展を開催。いっぽう石垣は、より直裁的な表現で生活や風俗を描き、また社会主義に傾倒するなかで同時代の様々な問題を作品によって告発した。彼らは太平洋戦争が始まると「敵性外国人」という立場に置かれたが、アメリカの自由と民主主義の理想を信じ、日本の軍国主義を批判する作品を発表した。

石垣栄太郎 人民戦線の人々 1936-37(昭和11-12)頃 キャンバスに油彩 和歌山県立近代美術館蔵

 それぞれ異なる作風ながら、2人の作品には、日本人移民排斥や大恐慌、戦争など激しく揺れ動くアメリカ社会で生きるうえでの複雑な思いが込められている。石垣の故郷である和歌山県で開催される本展は、2つの国の間で生きた2人の画家が、時代と社会に対してどのように向き合い、作品を残したのかを改めて考える機会となるだろう。

石垣栄太郎 ボーナス・マーチ 1932 キャンバスに油彩 和歌山県立近代美術館蔵

編集部

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