今年生誕110年を迎える画家・田中一村(1908~77)。各地の美術館で展覧会が開催されるなど、いま再び脚光を浴びている一村の作品が、今度は故郷・栃木市のとちぎ蔵の街美術館で展示される。
幼少期から画才を発揮していた一村は、26年に東京美術学校(現・東京藝術大学)に入学するも、わずか2ヶ月あまりで退学。画壇から離れて制作を続け、50歳で鹿児島県・奄美大島へ渡る。その後は69歳で生涯を終えるまで、亜熱帯の植物や鳥をモチーフに日本画を描き続けた。
また、本展で一村とともに紹介されるのは、今年没後40年の画家・刑部人(1906~78)だ。
刑部も一村と同じく栃木県下都賀郡(現・栃木市)の出身。24年に東京美術学校に入学し、次席で卒業する。順風満帆な画家人生に見えるが、当時のフォービズム、キュビズムをはじめとする新しい潮流に翻弄され長いスランプに陥ることもあった。しかし自らの原点に立ち返って洋画の手法で写実的に日本の風景を描き、その評価を確実なものとする。
本展では、田中一村と刑部人それぞれの作品約25点ずつを展示。ふたりの「希望と苦悩」に焦点を当て、描きながら模索する姿を追う。