歴史資料や創作物では、社会の規範や支配体制の枠組みにおいて「悪人」や「悪党」とみなされた人々が、一転してヒーロー・ヒロインとして魅力的に描かれている例が多々ある。そのいっぽうでは、歴史上で大きなことを成し遂げた人物が、後世への教訓のために「悪い例」として語り継がれていることも少なくない。
そんな多様な立場、視点によって記録された、古今東西さまざまな「悪人」あるいは「ヒーロー」たちを集結させ、その虚像と実像に迫る展覧会「悪人か、ヒーローか」展が東洋文庫ミュージアムにて開催中だ。
「集結!歴史のなかの『悪人』 or 『ヒーロー』」の章では、世界中の「悪」とされた人々を紹介。日本からは蘇我馬子・入鹿から赤穂浪士、あるいは鼠小僧といった様々な人物が取り上げられている。中国からは『三国志』や『封神演義』にも描かれた有名な人物たちや、『水滸伝』の豪傑たちといった個性豊かな人々が登場。そしてそのほかの国からは『千夜一夜物語』のアリババと40人の盗賊や、マリー・アントワネット、そしてナポレオンなど、多種多様な人々の「悪」とされる背景を展示している。
また、「さまざまな刑罰、流刑地」の章では日本と周辺の国口の流刑地や、そこでの暮らしなどを紹介するほか、「人ならざる『悪』を描く」として、地震の象徴である「なまず絵」のなまずなど、人々の平和を害すると考えられていた「悪」の姿にも焦点を当てている。
人々が恐れ、あるいは一転して魅力的な存在として君臨してきた「悪」の様々な面に触れることができる展覧会だ。なお、同展は太田記念美術館を中心に開催されている多分野連携展示「悪」の一貫。ほかの展覧会もあわせて注目したい。