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江戸を騒がせた「悪」たちの共演、再び。太田記念美術館で「江戸の悪 PARTⅡ」が開幕

2015年に開催され、大きな話題と評判を呼んだ東京・原宿の太田記念美術館「江戸の悪」展。その第二弾となる「江戸の悪 PARTⅡ」が2018年6月2日から7月29日まで同館で開催される。江戸を騒がせた実在した悪人から、歌舞伎の人気題目の悪人、そして悪女など、浮世絵に描かれた様々な「悪」の姿を楽しめる本展の見どころをお届けする。

展示風景より、歌川国芳《水滸伝ふくまのでんにて百八の星おはしらす見立浦嶋太郎玉手箱をひらく》(1845〜46)

 「江戸の悪 PARTⅡ」展は、浮世絵に描かれた「悪」たちの姿に焦点を当て、その魅力を探るもの。2015年に開催され、好評を博した展覧会の拡大版だ。前回から倍の人数の「悪人」たちが描かれた浮世絵が勢揃いしている。

 本展ではまず、盗賊・ねずみ男を描いた松雪斎銀光《講談一席読切 松林亭伯円 鼠小僧次郎吉 尾上菊五郎》(1874)や、妖術使いによって召喚された巨大な骸骨が描かれた歌川国芳《相馬の古内裏》(1845〜46、個人蔵)といった有名作品に出迎えられる。これから始まる「悪」の共演のダイジェスト版だ。

展示風景より
展示風景より 歌川国芳《相馬の古内裏》(1845〜46、個人蔵)

 そこから続く「悪人大集合」の章では、「盗賊」「侠客」「浪人」「悪僧・悪の医者」「悪の権力者・悪臣」「悪女・女伊達」「悪の妖術使い」と、個性豊かな悪人たちが、1階展示室から2階展示室にわたって勢揃いしている。ときにグロテスクな浮世絵独特の表現を楽しみながら、悪人たちや、事件をもとに芝居になった際に演じた役者たちなど、各作品の背景も同時に読み解くことによって、よりその魅力に引き込まれるだろう。

展示風景
展示風景より、手前が歌川国貞(三代豊国)《近世水滸伝 笠川髭造 中村福助》(1867)

 また、2階展示室では、「言葉としての悪」で紹介されているユニークな作品に目が奪われる。「善」と「悪」の間で揺れ動く葛藤の様子が、コミカルに表現されているなど、現代のマンガにも通じる表現に注目したい。

展示風景より、歌川国貞(三代豊国)《三幅対戯場菜食》(1855)

 そして本展は地下展示室の「恋と悪」、「善と悪のはざま」の章へと続く。ここでは恋のあまり自身の身を崩すストーリーが人気を博した歌舞伎のいち場面などを描いた作品が紹介されている。

 例えば、歌川国貞(三代豊国)の《東都贔屓競 二 清玄桜姫》(1858)では、の破戒僧が恋い焦がれる桜姫の袖にすがりつくという歌舞伎・浄瑠璃の演目『清玄桜姫物』の光景が描かれている。現代のストーカーそのものの振る舞いをしながら、叶わぬ恋のために身を滅ぼす破戒僧を描いた同作は好評を得て、芝居で盛んに上映されたほか、派生作品も多く生み出されたという。

展示風景より、歌川国貞(三代豊国)《東都贔屓競 二 清玄桜姫》(1858)

 また、物語の内容だけではなく、その表現手法のこだわりにも注目したい。月岡芳年の《英名二十八衆句 直助権兵衛》(1867)といったショッキングな作品では、どろどろとした血液の質感を表現するために、血の部分には膠が混ぜられているという。

展示風景より 月岡芳年《英名二十八衆句 直助権兵衛》(1867、個人蔵)

 展覧会の最後を飾るのは、「悪」から「善」に会心するも、その誤解が解けないまま悲劇へとつながってしまう歌川国貞《義経千本桜(椎の木)》(1829)だ。一言では「悪」とはくくれない江戸時代に描かれた人間の姿は、現代にも通じるものがあるだろう。

展示風景より 歌川国貞《義経千本桜(椎の木)》(1829、個人蔵)

 なお、本展は都内の6つの施設で開催されている「多分野連携展示『悪』」のひとつ。さまざまな「悪」をテーマにした展覧会が、本展のほか、「悪人か、ヒーローか Villain or Hero」展(東洋文庫ミュージアム)、「惡―まつろわぬ者たち―」(國學院大学博物館)、「HN【悪・魔的】コレクション〜evil devil〜」(ヴァニラ画廊)、「悪を演る―舞台における悪の創造―」(国立劇場伝統芸能情報館)、「悪を演る―落語と講談―」(国立演芸場演芸資料展示室)が開催されている。こちらもあわせて注目し、様々なかたちの「悪」を見つめたい。

編集部

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