2018.4.30

人はなぜ「悪」に魅了されるのか?
悪役を浮世絵から探る
「江戸の悪 PARTⅡ」が開催

様々な「悪人」のイメージを浮世絵から探り、好評を博した太田記念美術館の「江戸の悪」展開催から3年。さらに充実した内容で「江戸の悪」を紹介する展覧会「江戸の悪 PARTⅡ」が東京・渋谷の太田記念美術館で開催される。会期は2018年6月2日〜7月29日。

歌川国芳 木下曽我恵砂路 個人蔵(後期展示)
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 2015年に太田記念美術館で開催された展覧会「江戸の悪」。同展はそのタイトルのとおり、江戸時代の「悪役」にフォーカスした展覧会だ。2018年6月2日から開催される待望の第二弾「江戸の悪 PARTⅡ」では、前回からさらに充実した内容でその魅力を伝える。

月岡芳年 英名二十八衆句 因果小僧六之助(前期展示)

 江戸時代は、盗賊、侠客、浪人から悪の権力者、悪女、悪の妖術使いといったアウトローや悪人たちが人気となり、脚色がほどこされて芝居や小説などに登場するようにもなった。本展では伝説上・架空の人物から当時の江戸を騒がせた実物の大盗賊まで、様々な「江戸の悪」たちが描かれた浮世絵が紹介される。

 いわゆる「悪党」だけではなく、歌舞伎で人気のあった複雑な恋愛劇にも悪は潜んでいる。「東海道四谷怪談」のように恋愛感情の屈折によりもたらされた悪事や、「清玄桜姫物」に描かれるストーカーのような破戒僧たちの姿も浮世絵に描かれている。

歌川国貞(三代豊国) 東海道四谷怪談(後期展示)

 本展ではほかにも、「善と悪のはざま」についてもフォーカス。佐野次郎左衛門のように善人がひどい侮辱を受けて多くの人を殺傷するという芝居や、「義経千本桜」のいがみの権太のように小悪党が善行をして死んでいくというように、一口では「悪」とくくれない、善と悪を行き来する筋立ては江戸の人たちの心をつかんだ内容だ。

 葛飾北斎、歌川国芳、歌川国貞、そして月岡芳年といった錚々たる顔ぶれが描き出す「江戸の悪」の姿。それぞれの生き方を、浮世絵を見ながら楽しみたい。