フランツ・カフカの小説『変身(Die Verwandlung)』は、主人公のグレゴール・ザムザが、ある朝に不安な夢から目を覚ますと虫になっていたという衝撃的な書き出しから始まる。この冒頭から着想を得たVR作品「VRwandlung」が開発された。
チェコのアーティスティック・ディレクター、ミカ・ジョンソンが中心となって製作したという本作は、『変身』の作品世界に入り込んで巨大な虫に変身するというもの。鑑賞者は主人公・ザムザ自身と同様、まず変貌した体を仮想空間の中でどのように動かすかを学ぶ。VR空間は小説の記述に倣ってザムザの部屋が作られており、その外ではザムザの家族と上司が部屋に入れてくれと騒いでいる。この作品によって、カフカが書いた「疎外」というテーマを身をもって体験することができるという。
360度を見渡すパノラマ映像により、空間を隈なく探索し尽くせる本作。その仮想現実の中で鑑賞者は、傍観者として眺めているだけでも、なにかアクションを起こすことも自由だ。ザムザが見た光景を、身をもって体験することができる。
なお、会期中は図書館外のスペースで、カフカが見たという短編映画も上映。カフカは書簡や日記に鑑賞した映画作品について書き残しており、それを見るとカフカが映画を非常に愛好したことがわかる。よりカフカの世界に浸ることができそうだ。
オープニングイベントには、本作を手がけたジョンソンも来日。合わせて注目したい。