2018.6.9

南北の日常写真を
並置して1枚の作品に。
分断の歴史と向き合う写真家・
菱田雄介の個展が開催中

菱田雄介展「border | korea」が東京・東神田のKanzan Galleryで開催されている。本展は、菱田が2017年に発表した写真集『border | korea』(リブロアルテ)に収録されている作品のプリント展示に加え、「Moving Portraits」と題された新作を含むプロジェクションから構成されている。会期は6月24日まで。

菱田雄介 Pyongyang (2015.5), Seoul (2016.7)
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 菱田雄介は1972年東京生まれ。写真家、映像ディレクターとして活動する菱田は、イラクやアフガニスタン、9.11後のニューヨーク、東日本大震災に見舞われた東北地方など、歴史が動く場所に赴き、メディアからこぼれ落ちるような日常風景の撮影を続けている。

 2009年以降は、いまもなお軍事境界線によって分断状態にある韓国と北朝鮮を行き来しながら撮影を重ねてきた。17年12月に発表した写真集『border | korea』(リブロアルテ)は、分断された2つの国で暮らす人々のポートレートや日常風景を同じように撮った写真群で構成されている。

菱田雄介 Pyongyang (2009.10), Seoul (2017.12)

 作品集と同名の展覧会「border | korea」は、収録作品のプリント展示に加え、「Moving Portraits」と題された新作を含むプロジェクションから成る。

 両国の日常風景それぞれを同じように撮った写真を並置する菱田の作品は、同じ民族が戦争によって分け隔られることがどういうことかを淡々と訴えかけ、マスメディアからとは違う角度で、南北の現状を伝えてくれるだろう。