末永史尚は、1974年山口県出身。99年に東京造形大学造形学部美術学科美術Ⅰ類を卒業し、現在は制作と同時に東京造形大学で講師も務めている。近年の主な個展に、「APMoA Project, ARCH vol. 11 末永史尚『ミュージアムピース』」(愛知県美術館、2014)、「アンシャープ」(GALLERY ZERO、2015)、「サーチリザルト」(マキファインアーツ、2018)など多数。グループ展では「引込線 2017」(旧所沢市立第2学校給食センター、2017)や「名をつくる」(blanClass、2018)などに多数参加しているほか、キュレーターとして「マキファインアーツ5周年企画『控えめな抽象』」(マキファインアーツ、2015)などの展覧会を手がけるなど、多方面で活動をしている。
末永の作品は、インターネットの検索画面、あるいは美術館の一角など、日常生活にありふれているものを解釈し、絵画やオブジェとして制作するというもの。自身の作品について「雑誌や漫画、写真や既存の作品を素材として、印刷物の網点を拡大したり、漫画ののふきだしを切り抜いて色を塗ったり、イメージをそのまま写しとったり、と手を加え眺める。眺めながら、ぼんやりとみえてくる次の姿を見つけ、そのぼんやりをちょっとずつぬぐうように色をのせたり別の層をかさねてみる」と語っている。
そんな末永の個展「形づけ:form」が、大阪・GALLERY ZEROで開催中だ。
15年に同ギャラリーで開催した「アンシャープ」展では、愛知県立美術館所蔵作品と同寸法の額縁の絵画作品を展示したことで、作品を取り巻く環境について考察したという末永。今回の「形づけ:form」展では、末永の考察はさらにその周辺にまで及んでいる。
本展に際し、末永は「造形の対象にされていないようなものに注視し、オブジェクトとしてかたちにしていったものが最近の自分の作品だと認識しています。『対象にされてきたもの』はすでに行いに名前のついた既知のものであり、そうでないことに目を向け、解釈してかたちを与える(時間と場所を超えて共有できるものにする=作品化する)ことを考えています」とコメント。
末永が日用品を発想元として制作したハンドメイドオブジェはリアルさより素朴さが際立ち、その題材が何であったのか想像できる形体をしている。そしてそれらのオブジェが展示された空間自体がだまし絵のようになるという、作品をとりまく周辺も作品としている展覧会だ。