約160年前、桜散る隅田川、藤咲く亀戸明神、雪の浅草寺など江戸の風景をみずみずしく描写した歌川広重。亡くなるまでの3年を費やし制作した晩年の代表作「名所江戸百景」は、江戸から明治へ烈しく様変わりする直前の江戸の姿を切り取り、当時の江戸の様子を現代にも伝えている。
本展では、この名作シリーズ「名所江戸百景」を前後期に分けて全点展示。極端な遠近法を用いたユニークな構図や大胆な色使いは、晩年になってもなお衰えなかった広重の制作意欲を感じさせる。また、保存状態の良好な太田記念美術館のコレクションからは、浮世絵版画を支えた彫師や摺師たちの超絶技巧も楽しむことができる。
近年浮世絵からの影響が改めて注目されているフィンセント・ファン・ゴッホも模写したという「亀戸梅屋舗」「大はしあたけの夕立」など、見逃せない作品も多数公開。日本だけでなく世界に影響を与えた歌川広重が晩年にたどり着いた境地を堪能したい。