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性の境界を飛び超える華やかな江戸文化。「江戸の女装と男装」展が太田記念美術館で開幕

「江戸の女装と男装」展が、太田記念美術館で3月2日から開催される。浮世絵を通して江戸時代の異性装の文化に迫る本展の見どころとは?

展示風景より、梅堂国政《勇肌祭礼賑》(1884)。男装する女芸者を歌舞伎役者の男性が女形として演じるという二重の構造になっている

 3月2日から太田記念美術館で開催される「江戸の女装と男装」展は、浮世絵に描かれた江戸時代の異性装の文化に焦点を当てた展覧会。「風俗としての女装・男装」「物語の中の女装・男装」「歌舞伎の女形たち」「歌舞伎の趣向に見る男女の入替」「やつし絵・見立絵に見る男女の入替」の5つの章で、多様な異性装の文化に迫る。

展示風景より。手前は月岡芳年《風俗三十二相 にあいさう 弘化年間廓の芸者風俗》(1888)

 江戸時代に異性装が行われた場として、まず挙げられるのが祭礼だ。吉原で行われた「俄(にわか)」という祭では、女性の芸者が鳶の恰好をして踊る獅子舞や、男性も含めたすべての役を女性が演じる劇などが楽しまれていた。また、歌川国芳が山王祭の様子を描いた作品では、異性装だけでなく、生き物や玩具など様々なものに扮した人々のユーモラスな姿を見ることができる。

展示風景より。手前は歌川国芳《祭礼行列》(1844頃)

 歌舞伎の世界でも、女性の登場人物を男性が演じる「女形」だけでなく、様々な男女の変換が行われていた。そのひとつが、男性の主人公を女性の設定に変えるパロディ作品。男女の入れ替えによって笑いを誘ったり、可愛らしさを演出したりすることで人気を博した。

展示風景より、歌川国貞《不二都久葉あいあい傘》(1831頃)。舞台上の姿ではなく、私生活で飛鳥山を散策する歌舞伎俳優2人の様子を想像して描かれたもの

 さらに江戸時代には、歴史や物語の登場人物などを、時に男女を入替えて当世風の人物に置き換える「やつし絵」や「見立絵」も流行。喜多川歌麿の《見立六歌仙》では、美人と評判だった当時の女性たちが平安時代の六歌仙に扮している。これらの「やつし絵」「見立絵」には、描かれている人物がわかるように、持ち物などによるヒントが散りばめられているのも興味深い。

展示風景より。左から、鳥居清長《やつし寒山拾得》(1779)、鈴木春信《やつし費長房》(1765)、喜多川歌麿《見立六歌仙》(1792-93頃)

 新しい切り口で、江戸時代の人々が楽しんだ華やかな文化を体感できる本展。これまで浮世絵にあまり馴染みのなかった人も楽しむことができそうだ。

編集部

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