月岡芳年(1839〜92)は、歌川国芳の門下で、幕末から明治にかけて活躍した人気の浮世絵師。武者絵、歴史画、美人画といったさまざまなジャンルの作品を制作したが、生涯にわたって力を注いだのは、歴史や小説、芝居などの怪奇的な物語を題材とした妖怪画だ。
画業の初期から妖怪を描いていた芳年。師匠である国芳の影響はもちろんのこと、芳年自身も妖怪を身近に感じていたという。本展では、そんな芳年が描く、怪奇画集の傑作とされる「和漢百物語」と「新形三十六怪撰」を含む、恐ろしくもユーモラスな妖怪画約100点を大公開。
全26図の『和漢百物語』を出版したのは1865年。中国と日本の妖怪に取材したこの本は、数え27歳の気鋭の作家であった芳年による最初の妖怪画集だ。
最晩年に出版した妖怪の揃物『新形三十六怪撰』は、36図からなるシリーズ物で、芳年が生涯をかけて手がけてきた妖怪画の集大成と言っても過言ではない。なかでも《源頼光土蜘蛛ヲ切ル図》は本展の見どころのひとつ。『平家物語』『太平記』の「剣の巻」に伝わる、源頼光の土蜘蛛退治の逸話を題材にした本作は、迫力ある作品に仕上がっている。
さらに、本展に引き続き「月岡芳年 月百姿」を連続開催、横浜市歴史博物館では「丹波コレクションⅡ 歴史×妖×芳年」を同時期に開催する。相互割引を利用して、芳年の妖怪画の世界を堪能する夏を過ごしてみてはいかがだろう。