1950年オランダのアイントホーフェンで生まれ、現在も同地で暮らしているヘンク・フィシュは、ヴェネチア・ビエンナーレ(1988)やドクメンタ9(1992)をはじめ、数々の国際展に参加。近年では、西沢立衛建築による森山邸での展示(2006)や、伊東豊雄設計によるシンガポールVivoCity(2006)、北京でのパブリックアートプロジェクトに参加するなど、アジアでの存在感もさらに強まっている。
フィシュは存在と非存在の境界線に注目しながら思考を深く巡らせ、導き出された様々な思考の様相を象り、立体として可視化することで、「不可視であるもの」への問いを私たちに投げかける。モチーフを正確に知るために実際に触れながら造形し、その感触自体の表現を試みることによって生み出される独特のフォルムを持つ彫刻や、ドローイング作品に描かれる図像視覚以外の感覚から抽出されていく。
本展の中心となるのは、2018年に制作された新作彫刻12点。新作はこれまでと同様、ブロンズ製の鋳造像をベースとしながらも、透明感のあるアクリルやガラス、電気仕掛けの動力、素朴な木片や模型などが用いられ、異素材同士の同居が繊細かつユニークに演出されている。また、彫刻の周囲にはフィシュ作品のもうひとつの側面であるポエティックなドローイング約20点が並べられる。
本展では、作家本人が展示構成を担当。独立した物体と空間の相互干渉的な関係性、その複雑な折り重なり合いは、観る者すべてに非現実で魔法のような感覚を与えてくれるだろう。