和田昌宏は1977年東京都生まれ。1999年に多摩美術大学中退後、2004年にロンドン大学ゴールドスミスカレッジ ファイン・アートを卒業し、以降精力的な活動を行っている。近年では「ヨコハマトリエンナーレ2014」をはじめ、「奥能登国際芸術祭2017」などに参加。今年は「ASIAN ART AWARD 2018」のファイナリストにも選出され、注目を集めている。
そんな和田がこれまでに制作してきた映像作品の中から「昔話」をテーマにした作品を軸に構成される個展「MASAHIRO WADA FILM WORKS」が、東京・代官山のLOKO GALLERYで開催される。
和田はこれまでに「さるかに合戦」「こぶとりじいさん」「山姥」などの昔話を作品化してきた。多くの日本人が知る童話性の高いエピソードを着想源としながらも、原作のイメージとはかけ離れたシリアスな映像と重層的な構造で展開していくこれらの作品は、現代社会の様相や、人間の精神の深淵を炙り出すかのように鑑賞者に迫ってくる。
これらの作品でたびたび用いられている、建築物のような可動式インスタレーションを映像の中に敷衍するという手法や、炎・肉・闇・煙といったプリミティヴかつ魔術的なモチーフの数々などは、近年の和田作品に通底するもの。これらの象徴的な要素からは、映像やインスタレーション、パフォーマンスといった多岐にわたる美術表現への、和田によるダイナミックな実験と挑戦を見ることができる。
本展では前述の昔話を扱った3作品を中心に、神話や民間伝承にまつわる他作品やスケッチ的な素材なども織り交ぜながら、近年の和田の一側面をクローズアップする。