東京大学カブリ数物連携宇宙研究機構(Kavli IPMU)は、基礎科学の数学、物理、天文の3分野の研究者が連携して、宇宙の謎を解き明かすことを目指す研究所。20世紀初頭のパリでパブロ・ピカソやマルセル・デュシャンらが科学と出会い、多様な文化や表現が生まれたことから、科学と美術の「再邂逅」を試みる活動も行っている。
その活動の一環として行われたのが、Kavli IPMUでの1ヶ月間のアーティスト・イン・レジデンス。2015年には「現代科学が想定する高次元論から絵画を再考する」ことをテーマに活動する野村康生、16年には、コンピュータープログラミングを用いた数理的処理を素材に、インスタレーションを発表するメディアアーティストの平川紀道、18年には「仮説としての彫刻のプラン模型」シリーズなどを制作する春山憲太郎が招かれ、研究を行う現場で、研究者と交流し、制作を行った。
本展は展示空間で行う1回目の成果展となり、18年2月までレジデンスを行っていた春山が、滞在中に制作した新作を発表する。さらに、いずれも新作として、野村の絵画作品5点(内3点は旧作)によるインスタレーション、平川の映像音響インスタレーション《datumn》を展示。本レジデンスプログラムについての紹介や、Kavli IPMUでの研究内容についての紹介も交え、科学と美術の邂逅がつくり出す多様な可能性を提示する。
なお、会期中にはKavli IPMUの研究員によるレクチャーや、哲学、美術論、科学論の専門家を招いたシンポジウムなど多数のイベントを開催。科学と美術、両者の立場から理解を深めることができる。