岡本太郎(1911〜96)が写真と出会ったのは若き日のパリ留学。画家だけでなく写真家とも交流を持っていた岡本は、ブラッサイやマン・レイに写真の手ほどきをうけ、引き伸ばし機を譲り受けるなどしており、戯れに展覧会にも出品することもあった。
しかし、岡本が熱心に写真に取り組むようになったのは戦後、雑誌に寄稿した文章の挿図に、自らが見たものを伝える手段として写真を取り入れたときから。取材した土地や旅先で、子供たち、風土、祭りの熱狂、動物、石と木、坂道の多い街、屋根、境界、といった見過ごされがちな、ささいな瞬間をフィルムに写し取った。
本展では、そういった岡本の写真作品を紹介。レンズを通して見つめた岡本の眼の痕跡をたどり、その眼差しを追体験する。さらにその写し取られたイメージから「岡本太郎の眼」が見つめとらえたものを検証し、絵画や彫刻にも通ずるその関心や思考を探る。