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ムサビの「生成AIについての学長メッセージ」はいかに生まれたのか。キーパーソンに聞く

2023年5月11日、東京・小平市の武蔵野美術大学は「生成系人工知能(生成AI)についての学長からのメッセージ」を学生に向けて発表。その「美術大学」という学びの場としての独自の見解が大きな話題を呼んだ。このメッセージが発表されるまでの経緯や議論、そして今後期待することについて、学長・ 樺山祐和指揮のもとメッセージ作成を担当した同大情報教育センター長で視覚伝達デザイン学科教授・古堅真彦と、コンプライアンス面を監修した法学教授・志田陽子にメールインタビューで聞いた。

聞き手・文=三澤麦(ウェブ版「美術手帖」編集部)

武蔵野美術大学

「生成AIについてのメッセージ」は「美術大学」という学びの場でいかに構築・発信されたのか

──5月11日に学生向けに公開された「生成系人工知能(生成AI)についての学長からのメッセージ」は、「美術大学」としての生成AIに対する柔軟な向き合い方が世間の話題を呼びました。まず、本メッセージを出すこととなった経緯を教えて下さい。

古堅真彦(以下、古堅) 昨年度半ばに「Midjourney」という絵を描く生成AIが世の中で話題になり、大学内でも学内に設置されている情報教育センターをはじめとして、コンピュータに精通した教職員の間では美術大学としての方針を出すべきという機運が高まりました。しかし、まだ「Midjourney」の一般社会での認知度が低く、また機能の高さはわかるのですが、実際にどのような機能や使い方ができるのかの感覚的な理解が深められず、議論が後回しになっていました。

 そして、今年3月頃にマスメディアが「ChatGPT」についての話題を取り上げ、それに伴い、東京大学などがいち早く対応方針を発表しました。本学でも色々なところで話題にのぼることや、実際に生成AIに触れる教員も増え、武蔵野美術大学も方針を出したほうがいいのでは、という話も出るようになりました。

 とくに教養科目担当の教員からは、世の中でよく言われている「生成AIがつくった授業レポートが提出されてしまう」ということが危惧され、まずはこの点について早急に大学方針を打ち出すべきだという議論がされるようになりました。

Midjourney(https://www.midjourney.com/showcase/recent/)
OpenAI ChatGPT(https://openai.com/chatgpt)

 ただ、生成AIは上記の「Midjourney」のような絵を描くものなどもあり、その多様な可能性や方向性を吟味する必要があります。単純に「コピーペーストはだめ」というだけでは説得力やメッセージ性が低いため、美術大学に特化したメッセージを出すべきだという考えに至りました。

 そこで私が原案を作成し、学長がリーダーシップをとり、ファインアート系・デザイン系・教養科目など様々な分野の教員と議論を重ね、5月11日にメッセージを発表することとなりました。

 世の中での評価としては「美術大学として、早めにメッセージが出た」という意見も見られましたが、こういった経緯から、メッセージを出すタイミングとしては、少し遅かったとも考えています。しかし、逆に考えると、現段階での生成AIの状況と美術大学という特性との関係をじっくり考えて、現状に対応した適切なメッセージが出せたとも感じています。

 ──「美術大学」というアート・デザイン領域の教育機関から生成AIに関するメッセージを出すに当たって、とくに重要視した点はありますか。

古堅 主に2つあります。ひとつは、たんなる使用禁止にはとどまらず「積極的な理解を促す」ことを強調したということ。もうひとつは「大学は学びの場である」ということを確認したことです。

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