2017.11.27

世界へ広がる大学間のネットワーク。筑波大学が目指す、芸術の
「ユニバーシアード」とは?

平成25年度から4回にわたり、筑波大学が文化庁とともに主催してきた新進芸術家育成交流作品展「FINE ART / UNIVERSITY SELECTION」(通称・ファインアート展)。今年で5年目を迎え、「ファインアート・ユニバーシアードU-35展」と名を改めて再出発した展覧会の見どころを、ファインアート展実行委員長の太田圭教授に聞いた。

昨年度のファインアート展の展示風景
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国内外に広がる大学間のネットワーク

――国内外の大学から選出された、各大学の卒業生または修了生である若手作家の作品が一堂に会する本展も今年で5年目となります。東京2020公認プログラムへの参画も決まった本展の見どころを教えてください。

 今年は、名前も「ファインアート・ユニバーシアードU-35展」と変えて、35歳未満の若い作家の育成と活動支援を押し出しています。また、国際的な展覧会という位置づけを目指し、今後はさらに海外の参加校を増やすことも視野に入れています。出品作家には世界での活躍と、そのいっぽうでの「日本らしさ」の両方を期待しているところはありますね。海外に留学する作家もいたりと、少しずつ成果がでてきていると言えると思います。また逆に海外から参加した作家が日本で学びたいと、実際に筑波大学に留学した例もあります。絵画、版画、彫塑、書とそれぞれ異なるジャンルの作品を同じ展示会場で見ることができるのも大きな特徴です。

――前回の54大学から、今回は国内外95大学118名の参加と、参加大学も大幅に増えました。 

 全国の芸術系・教育系の大学をリストアップして、そのすべてに出品を打診しました。全国からこれだけ多くの大学に参加していただいているので、より大規模な展覧会に発展させていきたいという目標がありますね。   

――展覧会に参加する作家たちにとっては、本展はどのような機会となるのでしょうか。

 まず、展覧会を通して、全国にこれだけの制作をしている若手作家がいるということを実感できるでしょう。また展覧会関連企画を通して、日本と海外の参加者の交流が進むことも期待できます。展覧会をきっかけにして様々な作家たちが出会い、それぞれに交流を発展させていくのが理想です。

新進芸術家育成交流作品展「FINE ART / UNIVERSITY SELECTION 2016-2017」の展示風景

若手作家の作品が光るもうひとつの選抜展

――昨年から開催されている、「ファインアート展」出品者からの選抜展「新進芸術家選抜展 FAUSS」の反響はいかがでしょうか。

 「ファインアート展」では、ひとりの出品作品数も限られるので、数名であっても優秀な作家に自分の世界をアピールしてもらう機会をつくる目的で「FAUSS」を始めました。金銭面や作品集を出すなどの支援であったり、地方の方にとっては東京で初めて展示をする機会になったりと作家からは非常にありがたい展示だったといった反響がありました。作家の目線で言うと展示をするのに負担も少ないし、この機会を自分自身への良い刺激や世の中に知ってもらうきっかけにしてもらえればよいかなと思います。

 今年はアーツ千代田3331のメインギャラリーでの展示なので、かなり広いスペースも使え、出品作家7名それぞれが複数の作品を展示できます。1点の作品で作家の世界を表すのは理想とはいえ難しいことですが、複数点出品できると鑑賞者にも作品の深みを見せることができます。作家にとっても気合が入る機会になるとともに、鑑賞者にとっても見ごたえのある展示となることでしょう。

「新進芸術家選抜展FAUSS」より 半澤友美 Being 2016 170×30×30cm 紙漉き、ステッチ/手漉き和紙、糸、木、炭、顔料

――最後に、5年目を迎えた「ファインアート展」が今後目指すものを教えてください。

 まだ参加しておられない国内の大学もあるので、今後も声をかけてより多くの大学に参加していただくことです。また、海外の大学に声をかけて参加校を増やしていきたいですね。もっと海外の大学に参加してもらうことで、日本の大学や若手作家にとっても様々な刺激が得られるものになると考えています。

ファインアート展実行委員長の太田圭教授

『美術手帖』2017年12月号より)