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丹下健三の名作建築10選。「世界のタンゲ」が歩んだ道のりをたどる【2/3ページ】

初期の名建築

平和記念公園、広島平和記念資料館(1955)

原爆ドーム側から見た平和記念公園と広島平和記念資料館 写真提供=一般社団法人広島県観光連盟

 広島県広島市の平和祈念公園は、1945年8月6日までは繁華街だった場所につくられた公園。この公園内にある平和記念資料館(原爆資料館)は「平和をつくり出す工場でありたい」というコンセプトで設計されている。東西に伸びる「平和大通り」と直行する直線上に資料館、原爆戦没者慰霊碑、原爆ドームを配置。ピロティのあいだから慰霊碑、原爆ドームまで眺めることができる空間設計となっている。

 本館は、「DOCOMOMO Japan」によるモダニズム建築100選に選出されているほか、2006年には戦後建築物として初めての、国の重要文化財にも指定されている。

 終戦間際、父の訃報を受け、丹下は東京から愛媛県今治市の実家へ向かう途中の尾道市で新型爆弾が落とされたことを知る。そして、その日に今治市も空襲を受け、丹下は母も亡くしている。丹下がル・コルビュジエと出会った場所でもある広島は、彼にとって特別な土地であったという。

広島平和記念資料館
住所:広島県広島市中区中島町1-2

広島平和記念公園
住所:広島市中区中島町1及び大手町1-10

香川県庁舎 東館(1958)

香川県庁舎 東館 写真提供=香川県

 戦後の庁舎建築として初めて国の重要文化財に指定された初期の代表作。日本の伝統的な木造構造をイメージした柱と梁の組み合わせを、打放しのコンクリートで表現した外観は、日本の伝統とモダニズム建築が融合したものとして高く評価され、2022年には「香川県庁舎旧本館及び東館」として、国の重要文化財に指定された。また、コンクリートは型枠に杉材を使用し、美しい木目が写しこまれているのも特徴。また、道路に面する敷地にはピロティが設置され、県民に開かれた空間を構成している。

猪熊弦一郎《和敬清寂》 写真提供=香川県

 開放的な全面ガラス張りの1階ロビーにある壁画《和敬清寂》は、香川県出身の画家・猪熊弦一郎の作品で、建物内にある県庁ホールの家具はプロダクトデザイナー・剣持勇がデザインを担当。同館の設計には様々なクリエイターたちも携わっており、これらの独自性が国内外で高く評価されている。なお、同館の1Fにあるギャラリーにはこの建物についての写真資料などが展示されている。

香川県庁舎 東館
住所:香川県高松市番町四丁目1番10号