近年、大規模ギャラリーが世界各地に支店を構えていることもあり、以前は国や地域でわかれていたアーティストの所属ギャラリーが同じエリア内でも重なることが増えている。それを逆手にとって、一人のアーティストを抱える2つのギャラリーが手を組んで──例えばニューヨークの別の2ギャラリーが同時に個展開催をして──よりよいマーケティングにつなげるということがしばしば行われるようになってきている。またアートフェアで同じアーティストを抱える2つのギャラリーが共同でブースを出すというようなことも増えてきた。グローバル化やデジタル化で世界が「小さく」なっていくなか、ライバルだったギャラリーがこのように連携して新しいことをやってみようという動きが活発化している。そんななか、一見あまり日本のアーティストとの関係が強そうではないニューヨークとボルチモアの2つのギャラリーでこの秋、日本人・日系人作家達によるグループ展が同時開催された。
どちらも「スウィートホーム Sweet Home」と日英併記によるアメリカでは変則的なタイトルが冠され、ニューヨークのダウンタウン、ローワーイーストサイドにある中堅ギャラリーのレイチェル・ウフナーギャラリーと、ボルチモアに昨年オープンしたばかりのCPMギャラリーで開催された。COBRA、加賀美健、アイコ・ハチスカ、廣直高、アキラ・イケゾエ、イワオ・カゴシマ、松原壮志朗、トレバー・シミズ、八重樫ゆいの9名は両方で、CPMではさらに土肥美穂を加えた10名の作家の作品が展示された。
両展覧会のキュレーションはキャサリン・ブレナンが手がけた。キャサリンは以前はロサンゼルスで、近年はニューヨークのローワーイーストサイドでキャサリン・ブレナン・ギャラリーを構えていたが、コロナ禍の前にスペースを閉じて、場所を持たずにフレキシブルに活動をはじめたところだった。コロナ禍での隔離生活のなかで、なんとなくこれまで別々には見せたことがあった作家達を同じ空間で見せてみたいと夢想していたのが今回の展覧会のきっかけだったという。