『新装版 バウハウス叢書3 バウハウスの実験住宅』
バウハウス創設100周年を記念して、グロピウスとモホリ=ナギの共同執筆による「バウハウス叢書」全19巻が新装版としてよみがえった。バウハウスは建築、絵画、デザインなど諸領域に共通する造形概念を打ち立てようとしたが、その芽生えは1920年代の実験住宅を豊富な写真資料と解説でドキュメントした本シリーズの第3巻にも現れている。ドイツ語オリジナルの普及版に倣ったソフトカバー製で手に取りやすく、価格もリーズナブル。バウハウスをもっと生活に密着させて思考するための基礎資料となりそうだ。(中島)
『新装版 バウハウス叢書3 バウハウスの実験住宅』
アドルフ・マイヤー=編 貞包博幸=訳
中央公論美術出版|2200円+税
『セザンヌ 近代絵画の父、とは何か?』
2019年に生誕180周年を迎えた、フランスを代表する画家ポール・セザンヌ。これまで国内外の研究者 がその全貌を明らかにしようと試みてきたが、本書は「受容史」と「辞典」という2つの切り口から新しい側面に光を当てる。前半は「近代絵画の父」という通説が形成されてきたプロセスを、仏独英米日の5ヶ国それぞれの視点から精査する。後半は、鍵概念・先行研究の解説から展覧会・文献の一覧まで、セザンヌの基本情報を網羅する。本書を契機に研究がさらに発展することを期待させる。(近藤)
『セザンヌ 近代絵画の父、とは何か?』
永井隆則=著
三元社|4200円+税
『韓国近代美術史 甲午改革から1950年代まで』
韓国における「美術」は、日本の場合と同様、近代の産物である。ドイツ語から日本語へ翻訳された言葉が朝鮮へ渡り、20世紀初頭に日本の植民地支配とともに普及した。従って従来の韓国近代美術史は、伝統的文物から切り離されたものとして、また反植民地主義・抵抗民族主義の視点から記述されてきた。 著者はそうした偏狭な見方を批判的にとらえ、近代美術を中世から続く長い歴史の流れに位置付け、通史的かつ共時的に描写する。韓国の現代美術を理解するうえでも示唆に富む1冊。(近藤)
『韓国近代美術史 甲午改革から1950年代まで』
洪善杓=著 稲葉真以、米津篤八=訳
東京大学出版会|5500円+税