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INSIGHT - 2018.1.11

ジャコメッティの人生のひとコマを描き出す。映画『ジャコメッティ 最後の肖像』が公開

彫刻家、画家、素描家、そして版画家として活躍したアルベルト・ジャコメッティの伝記映画『ジャコメッティ 最後の肖像』が2018年1月5日より公開されている。当時すでに名声を得ていたジャコメッティをジェフリー・ラッシュが演じる。

映画『ジャコメッティ 最後の肖像』より©Final Portrait Commissioning Limited 2016

映画『ジャコメッティ 最後の肖像』より©Final Portrait Commissioning Limited 2016

 彫刻家、画家、素描家、そして版画家として活躍したアルベルト・ジャコメッティ(1901-1966)。昨年、東京・国立新美術館で開催された「ジャコメッティ展」が約2ヶ月半の開催期間中におよそ14万人の観客を動員したことも記憶に新しく、細長くデフォルメされた独特のシルエットの彫刻は、ジャコメッティの代表的な作品としてあまりに有名である。そんなジャコメッティの実像に迫る長編映画『ジャコメッティ 最後の肖像』が、1月5日より、全国で順次公開されている。

 物語の舞台は、1964年のパリ。ジャコメッティ(ジェフリー・ラッシュ)の個展が開かれるなか、友人で作家のジェイムズ・ロード(アーミー・ハマー)は、ジャコメッティから肖像画のモデルを依頼される。アメリカに帰国寸前だったが、「2日で描き上げる」という言葉を信じて意気揚々とジャコメッティのアトリエへと向かうロード。身近な巨匠の仕事を間近で見られるチャンスと張り切るが、そこでは18日間にもおよぶ地獄のセッションが待っていた。

映画『ジャコメッティ 最後の肖像』より©Final Portrait Commissioning Limited 2016

 本編は、美術評論家・エッセイストであるジェイムズ・ロードの『ジェコメッティの肖像』をもとに練られた知的コメディ。監督・脚本を手掛けたスタンリー・トゥッチは、長年ジャコメッティのファンで、構想に10年もの年月をかけ、伝記はもちろん、作家に関する資料を読み込み、そこで触れられてる要素や作家自身の思考、あるいは言葉を丁寧に抽出して作品をつくり上げていった。とくに、ジャコメッティのアトリエをなるべく忠実に再現することに力を入れたという。

映画『ジャコメッティ 最後の肖像』より©Final Portrait Commissioning Limited 2016

 ジャコメッティの伝記映画として制作された本作だが、焦点が当てられたのは、作家とロードが共に過ごしたたった18日間と短い。「様々な出来事が物語を進めていく構造を持った典型的な伝記映画」をつくりたくなかったという監督にとって、この短さは作品をより豊かなものにするために重要な点であった。トゥッチは、「誰かの人生をどうやったら1時間半とか2時間に詰め込めるのか、見当もつかない。それならば、彼の人生の一部を切り取って、深く掘り下げていくことほうがいい。そうすれば、ある種小宇宙のようなかたちで、ジャコメッティがどんな人間だったのかより普遍的に見せることができると思うんだよ」と語っている。

 確かに本作は、巨匠が作品を仕上げるまでの一部始終を描くような荘厳さはなく、非常にリズミカルなテンポでストーリーが進む。ジャコメッティは、ストイックであると同時に気まぐれで、ユーモラスかつ癇癪持ちで、自分のつくり出すものにつねに懐疑的である。そんなジャコメッティに振り回されるロードを中心に展開される物語は、一見作家の芸術性とは無関係に思える、ジャコメッティ自身の生き様を描き出すエピソードが連なる。しかしそのような人間味あふれる作家の姿は、作品が制作された現場の生き生きとしたヴィジョンとともに、作品をより理解するためのヒントを私たちに与えてくれる。

映画『ジャコメッティ 最後の肖像』より©Final Portrait Commissioning Limited 2016