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メトロポリタン美術館が入館料を義務化。50年ぶりの改定に見る美術館運営の現実とは?

1870年に開館し、世界を代表する美術館であるメトロポリタン美術館が入館料を義務化。約50年ぶりの改定により、財政難や美術館の公共性など、様々な問題が浮き彫りとなった。

文=國上直子

メトロポリタン美術館 Image courtesy The Metropolitan Museum of Art

 2018年1月初め、メトロポリタン美術館が入館料システムの変更を発表した。これまでは、「ペイ・アズ・ユー・ウィッシュ」というポリシーのもと、本人が希望する額を支払えば、入館することができた。同年3月1日より適用される新システムでは、これまで「推奨額」とされていた、大人25ドル、65歳以上17ドル、学生12ドルが、固定の入場料となる。(12歳以下は引き続き無料)

 チケットの有効期間は3日間となり、別館のクロイスターズ美術館とザ・メット・ブルーワーにも入館することができる。ニューヨーク州在住者と、ニュージャージー州・コネチカット州に通学する学生は、身分証明書等を提示すれば、引き続き従来の「ペイ・アズ・ユー・ウィッシュ」によって入場が可能。

 「多くの人に開かれた美術館」を目指し、1970年に導入された「ペイ・アズ・ユー・ウィッシュ」の抜本的改変は、大きな波紋を呼んでいる。メトロポリタン美術館の入場者数は年間700万人を超え、世界ではルーヴル美術館に続き第2位を誇る。過去8年間で来場者は、40%増加している一方、チケット収益は大きく低下している。「ペイ・アズ・ユー・ウィッシュ」の推奨料金を満額で支払う来場者は、2004年には63パーセントであったものの、現在では17パーセントまで落ち込んでいる。一人当たりの平均入場料は9ドルとなっており、この状況はメトロポリタンの深刻な運営難の一端を担っている。

 今回の変更に対して、「メトロポリタン美術館は一般市民が気軽に訪れることのできる文化施設であるべきで、料金システム変更は、経済的余裕のない人々から美術館に行く機会を奪うことになる」という否定派と、「入場者数増加に応じて増える運営コスト、行政からの補助金削減などの状況をかんがみると、避けられない選択」という肯定派に大きく分かれている。

 「篤志家たちによる寄付金や基金をうまく活用すれば、料金体系の見直しは不要なのではないか」という意見も出ているが、多くの文化施設があるニューヨークでは、寄付を確保するのは、他の施設との激しい競争を意味し、容易ではない。

 メトロポリタン美術館は、今回の料金変更の理由を「多くの人に訪れてもらえる美術館であり続けると同時に、経済的に安定した施設として繁栄していくため」としている。

 メトロポリタン美術館の運営コストは年間300万ドルに及び、しっかりとした「戦略」抜きでは運営の継続は困難であることを、今回の入館料変更は物語っている。美術館のような文化施設の役割を考えるときには、理想論が先行しがちになるが、経済的側面の議論も重要であることが、改めて浮き彫りになったといえよう。

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