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EXHIBITIONS

梅津庸一個展「ニュー・ロマンサー」

梅津庸一 共鳴 2022

梅津庸一 あかり 2022

ワタリウム美術館オフィスでの制作風景

ワタリウム美術館オフィスでの制作風景

 梅津庸一の個展「ニュー・ロマンサー」がライトシード・ギャラリーで開催されている。2月6日まで。

 梅津は1982年山形県生まれ。ラファエル・コランの代表作《フロレアル》を自らの裸像に置き換えた《フロレアル(わたし)》(2004〜07)や、自身をモデルに黒田清輝の《智・感・情》(1897〜90)を4枚の絵画で構成した《智・感・情・A》など日本の近代洋画の黎明期の作品を自らに憑依させた自画像をはじめとする絵画作品を発表。私塾「パープルーム予備校」と「パープルームギャラリー」の運営、テキストの執筆と活動領域は多岐にわたり、近年では『美術手帖』の特集「絵画の見かた」(2020年12月号)を監修。また滋賀県の信楽に滞在し、陶芸にも取り組んでいる。

 本展「ニュー・ロマンサー」は、今年1月にワタリウム美術館での個展「ポリネーター」を終えたばかりの、梅津による新作ドローイングのみで構成される。

 ライトシード・ギャラリーでは当初、次回展としてバリー・マッギーが選んだカリフォルニアの作家によるグループ展が予定されていた。しかし新型コロナウイルスの感染再拡大の影響を受けたシッピングの遅れにより延期に。そのため急遽、梅津に展覧会の依頼をすることになった。梅津はワタリウム美術館のオフィスをアトリエ代わりとして3日間で20点のドローイングを仕上げた。

 これまでもワタリウムのオフィスでは、ナムジュン・パイクやファブリス・イベールらアーティストたちが突発的・即興的なドローイング制作を行っている。それらの作品は直ちに展示に反映され、展覧会の同時代性やライブ感を際立たせてきた。

「ライトシード・ギャラリー」の名称は、1991年にスイスのキュレーター、ハラルド・ゼーマンを招聘して開催された、ワタリウム美術館の第1回の展覧会から取られている。ゼーマンは以下のような言葉を残している。「SEEDは種子、芽、起源、種子である。SEEDなしでは生命はない。LIGHTなしでは種子の発芽はない。LIGHTなしではぬくもりもなく、LIGHTなしでは生成も、精神もない。LIGHTなしでは浸透してくる闇も、その闇の力を抑制したり、闇のファンタジーを浄化したりすることもない。LIGHTなしでは絵画もない」。

 梅津はこのゼーマンの言葉に感化され、またワタリウム美術館のこれまでの営みや足跡のアーカイヴが残された部屋と対話しながらドローイングを生成したと言う。「制作に極振りした1年」を過ごし、そして大きな節目となった個展「ポリネーター」を経て、これまでにない制作者としての域に突入した美術家・梅津庸一の現在に注目してほしい。

「ぼくは制作において明確に美術史を意識し参照することが多かった。コロナ禍以降はもっと即物的に、フィジカルに作品と向き合うようになった。最近、テキストを書く仕事をほとんどしていない。しかしそれはたんに素朴な意味でのものづくりに回帰したわけではない。また、形式としての絵画でも情報としての絵画でもない。以前、ぼくはドローイングの仕事を『絵画の私有地化』だと言った記憶があるがそれは間違いだったかもしれない。ドローイングはうまくいけば理論的な構造と詩のような空間を同時に持ち得る。今回の作品たちはここ数日間のぼくの詳細なレポートでもあるが、まるで永遠でもあるように思う(梅津庸一)」